電動化のメリットをフルに引き出そうとするNASAのX-57

 BlackFlyは、機体規模と飛行速度に比べて翼面積が小さい。翼のほぼ全幅に渡ってモーター・プロペラを配置したから可能になった設計である。

 このような配置にするとプロペラの発生する気流が翼の上下を高速で流れるので、小さな翼でより大きな揚力を発生させることができる。翼は揚力を発生させると同時に、空気抵抗も受ける。抵抗を小さくするには翼面積を小さくすれば良い。しかし翼面積と揚力は比例するので、あまり小さくすることはできない。小さな翼で十分な揚力を得るためにはより高速で飛行する必要がある。プロペラの発生する気流を翼に当てると、高速飛行をしたのと同じ効果を得ることができるわけだ。

 オシコシには米航空宇宙局(NASA)も出展していた。NASAの展示でもっとも力が入っていた機体の一つが、新しい実験航空機「X-57」だ。

NASAの新しい実験航空機「X-57」(画像:NASA)。主翼に片側7基の電動モーターを装備している。

 X-57は米Tecnam社の「P2006T」という双発軽飛行機を改造して作られる全電動動力機だ。電動機の静粛性、高エネルギー効率、そして電動ならではの動力配置による短距離着陸性能を試験する。翼の全幅に渡って合計12基の小型モーター(ハイリフトモーター:出力10.5kW)を装備。翼端に2基の大型モーター(クルーズモーター:出力60kW)を持つ。離着陸時はクルーズモーターと、ハイリフトモーターの両方を動作させる。ハイリフトモーターは翼に当たる気流を高速化して揚力を増大し、短距離での離着陸を可能にする。上空に上がるとハイリフトモーターは停止し、空気抵抗を減らすためにプロペラをたたむ。巡航飛行は翼の両端にあるクルーズモーターのみで行う。

 X-57の技術的核心は、翼全体にずらりとモーターを多数配置して、翼に当たる気流を制御するところにある。このような配置は内燃機関のエンジンでは構造(すべてのエンジンに電気系の配線と燃料系の配管が必要)と、信頼性(すべてのエンジンの出力がスロットリングの間中、同じになるよう整備してコンディションを保つ必要がある)の面で非現実的だ。これはBlackFlyと同じく、電動モーターでなければ実現できない、新しい航空機の設計である。