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 「EAA AirVenture Oshkosh」には、自家用機やホームビルト機の業界の展示会という側面もある。小さなベンチャーから大手に至るまで、様々なメーカーが完成した機体から部品に至るまでの自社製品を展示し、存在をアピールする。

 それらの展示を見ていると、ひたひたとひとつのトレンドが押し寄せてきているのが分かる。航空機動力の電動化だ。

 航空機は軽くなくては空を飛ぶことはできない。ライト兄弟が、蒸気機関でも電動モーターでもなく、内燃機関を動力として選んだのは、それが一番軽くてパワーが出るからだった。蒸気機関は重い圧力釜を必要とするし、電動モーターは電池が重くて、航空機には不向きだったのだ。以来100年以上、ガソリンや軽油、灯油などの炭化水素燃料を使用する内燃機関が、航空機の動力源でありつづけた。

 が、近年電池の大容量化と軽量化、そしてモーターの高性能化の両方が進み、電動モーターを航空機の動力として使うことが現実的になってきた。その可能性は大きく、航空機の設計から利用形態までを一気に変えてしまう可能性を持っている。

 例えば、免許不要の自動運転の空中タクシーが自宅の近くに垂直離着陸でやってくる、というような光景が当たり前になるかもしれない。

 オシコシには、そんな未来に向けた取り組みがいくつも集まっていた。

ホームビルト機のレベルでも電動モーターの使用が始まっている。これはウルトラライトのカテゴリーの機体。

電動化最初のメリットは、免許取得費用が安くなること

 電動モーターの利用は、模型航空機では1980年代から始まっていた。現在、電動模型航空機はごく当たり前のものになっている。ここ数年話題になっているドローン(マルチコプター)も、電動化によって初めて実現可能になった。

 電動化のメリットは、

  • 1)内燃機関に比べて音が静かなこと
  • 2)回転数の制御や空中での起動・停止が簡単なこと
  • 3)大量の潤滑油を使用しないので油漏れの心配がなく動力部を清浄に保てること
  • 4)信頼性が高く、小さなモーターの多発装備が可能なこと

 ――などがある。

 これらのメリットを生かす試みがすでにさまざまな形で始まっている。
 例えば、グライダーに装着すると、離陸や高度獲得だけを動力で行うモーターグライダーにすることができ、簡単に行動範囲が拡がる。

電動モーターグライダーの例。Pipistrel Aircraftの「Taurus Electro」という機体。操縦席後ろの胴体からモーターとプロペラが付いた支柱が立ち上がる。滑空時は胴体内に収納して空気抵抗を小さくする設計。

 だが、現在クローズアップされているメリットは「航空機の免許取得費用が安くなる」という、いささか意外なものだった。