日本航空産業の復活を期待され、希望に満ちたMRJの開発開始から10年、トラブルに次ぐトラブル、遅延に次ぐ遅延。いったい何があったのか。三菱重工業単体のプロジェクト管理がもちろん最大の問題だが、そのような管理を行った背景、根底には、日本の航空機産業自体の構造的な問題が横たわっているのではないか。航空・宇宙ジャーナリストの松浦晋也氏が、識者から“深層”を掘り起こす。
シリーズ
「飛べないMRJ」から考える日本の航空産業史

完結
10回
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危なくても「空飛ぶ自動車」を作れる国であれ
「新しいものは怖い」と官僚の「利権が欲しい」が手を取り合って形成してきた日本の社会制度では、新技術を前に進めるために必須の、多種多様かつ急速な試行錯誤を行うことができない――これがオシコシでの見聞で感じた、最大の焦燥感で…
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オシコシで見た、未来はEVよりも電動飛行機?
おそらく、いくらコンソーシアムを立ち上げ、いつものように審議会を開催し、補助金でナショナルプロジェクトを動かしても、日本で新たなモビリティとしての航空機が根付くことは難しいだろう。
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「オシコシ」的イベントは米国だから可能、か?
1953年といわずとも1955年ぐらいまでに、EAAに相当する非営利組織が立ち上がって、ホームビルト機を日本社会において趣味として定着させる運動をしていれば、日本の航空産業は今とは大分違った様相になっていた可能性はあるだ…
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自作飛行機のコミケ? 米国「オシコシ」に絶句
オシコシには確かに航空機のすべてがあった。別の言い方をすると、「MRJで航空日本復活を」という言説に代表される、日本の航空産業振興策に欠けているものがすべてあった。
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オスプレイの設計は見事、そして鳥人間の罠
物理的な原理原則が分かると、全く違う世界が見えてくる――過去30年以上、航空機開発一筋できた四戸哲氏にかかると、今まで漫然と理解した気分になっていた飛行機のあれこれが、まったく違った方向から光を当てられる。
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日本がホンダジェットから学ぶべき教訓とは?
色々な意味でホンダジェットは、MRJと対照的です。開発拠点は最初から日本ではなく米国に置き、実験機を作って飛ばしている。そして米連邦航空局の型式証明を取得し、2015年から量産が始まっています。
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八方塞がりのMRJ、だからこそ前を向け
「少なくともMRJを開発したことで、旅客機開発の厳しさを身をもって体験したエンジニア群が生まれました。旅客機という商品の難しさに文字通り叩きのめされた彼らが、経験を生かす次のチャンスをつくらなくてはいけません」
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「国産航空機」を国交省は審査できるのか?
新型機を開発しやすい環境がないから、新型機の開発がない。新型機が出てこないから、耐空証明を審査する人材も育たず、書類の上での煩雑かつ実効性がない審査になり、ますます新型機を開発しにくくなる……
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ドイツは航空産業を「グライダー」で蘇らせた
日本と対照的に、ドイツは1980年代以降も航空機産業を着実に育成し、現在ではフランスと並んで旅客機のエアバス・ファミリーの設計に参加し、かつ主要生産国になっている。敗戦後の日本とドイツ、航空産業の道が分かれたのはどこだっ…
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冷戦で、日本は米国の航空技術に中毒したんです
MRJの開発遅延は三菱重工業単体のプロジェクト管理が最大の問題だが、そのような管理を行った背景、根底には、日本の航空機産業自体の構造的な問題が横たわっているのではないか。そのような設問に中立的な立場から答えられる人を、私…
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70歳定年 あなたを待ち受ける天国と地獄
従業員の希望に応じて70歳まで働く場を確保することを企業の努力義務として定めた、改正高齢者雇用安定法が2021年…
全8回