藤野社長は日ごろから「業界の常識は非常識」と語っておられます。

藤野:顧客の利益を第一に考えろという森長官のご指摘は、しごく当たり前のことなのに、自社の利益を第一に考える金融機関が多かった。販売手数料が大事だから運用成績が良くても悪くても解約させる回転売買が横行してきた。これでは企業の経営者とのつながりもできないし、投信が日本を支える力にもなれない。このままではだめだ、投信は変わらなければと思っていた時、あるドラマをみていて、これぞ今後の投信の目指す道だと思うようなシーンがあった。

ドラマ「龍馬伝」の中に、今後の投信が目指す道を見た

どんなドラマですか。

藤野:龍馬伝だ。ドラマの中で三菱財閥の創業者・岩崎弥太郎が坂本龍馬の実家から木材を買い、それを売り歩くシーンがあった。一軒一軒訪ね歩くが、なかなか売れない。奥さんにおまけを付けたらとアドバイスされ、端材で人形を作ったが、やはり売れない。ある時、訪問先で木材はいらないが、便所が壊れているから直して欲しいと言われた弥太郎は、手持ちの木材を使って便所を修繕してあげた。お客は大喜び、結果的に修繕に使った木材の代金を払ってくれた。。弥太郎は以後、無料で家屋などの修理を引き受け、そこに自分の木材を使うことで、結果として木材はどんどん売れるようになった。

「ひふみ投信」を売るのではない、売るのは投資の楽しさや夢

なるほど。発想の転換ですね。

藤野:弥太郎は木材を売ろうとしても売れなかったが、売る対象を修繕というサービス、すなわち、より清潔な空間、より快適な生活を売ることに変えた。その瞬間、木材はおまけになった。私がこれだ!と思ったのは、投資信託は木材だと思ったからだ。投信を売ろうと思っても売れない。投信はおまけだ、と考えればいい。我々が売るのは、将来の夢や希望、不安の解消であり、投信はあくまでおまけ。こういう考え方を社員に徹底させた。ひふみ投信を売るんじゃないぞ、売るのは投資の楽しさや投資の夢、意味だぞと、販売担当から運用担当まで浸透させた。

そのあたりが評価されて、資産残高も順調に伸びているのですね。

藤野:3月16日に運用資産残高が2500億円を超えた。1月末に2064億円だったから、急激な伸びだ。中核のひふみ投信は1500億円で、うち直販が500億円、ネット証券経由と地方銀行経由がそれぞれ500億円だ。地銀の販売ルートが増えている。2013年から始まり、今や21行がひふみ投信を販売してくれている。

いやいや売らされ、精神的にボロボロの人も

地銀の販売担当者の意識も同じように変えるのは大変ではないですか

藤野:全国の地銀を行脚して、行員向けにセミナーを開いている。顧客向けセミナーもあるから、年間120日くらいは出張している。地銀の販売員に、私は投信を売りに来たのではありません、皆さんを癒やしに来ましたと言うと、だいたいみんな面食らう。投信を売ることが、顧客はもちろん、経済全体にどれだけプラスになることなのか、販売員の仕事がいかに誇り高き仕事であるのか、その意味を2時間でも3時間でもこんこんと話す。地銀の販売員の中にはいやいや売らされ、精神的にボロボロの人もいる。私の話を聞いて、投信を売ることの意味がわかったと、元気になってくれる人も多い。