金融庁は銀行・証券会社などに対し、顧客の利益を第一に考える営業姿勢を強く求める。手数料を重視した無理な営業を見直し、個人顧客が長期投資によって資産を形成できるように改める。顧客の年齢、金融知識、保有資産などを考慮し、それぞれのニーズに合った商品を、わかりやすい説明によって販売することを要求していく。

 こうした方針を実現するために、金融庁は「7つの基本原則」を打ち出した。これまで掛け声ばかりで実現しなかった「貯蓄から投資へ」「個人の資産形成」の流れが、いよいよ動き出す。一連の改革のねらいを金融庁の森信親長官に聞いた。

(構成 日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab.

金融庁は金融機関に対し、顧客の利益の最大化に努める「受託者責任」(フィデューシャリー・デューティー)を果たすように求めている。(写真:PIXTA)

販売手数料を稼ぐための回転売買は行うべきではない

森信親(もり・のぶちか)氏
金融庁長官
東京出身。東京大学教養学部卒業後、大蔵省(のちの財務省)に入省。金融庁総務企画局総務課長、総括審議官、検査局長、監督局長などを経て2015年7月、金融庁長官に就任。

金融機関に対し、顧客本位の営業を求めるねらいは何ですか。

:金融機関は、顧客が満足する商品、顧客のためになる商品を提供するという、ビジネスの基本、ごくあたりまえのことができていなかった。

 これまでも適合性の原則などのルールはあったが、形式だけ整えても、金融機関が顧客の利益を第一に考えるように意識と姿勢を変えないかぎり、改まらない。

 販売手数料を確保するため、2、3年保有したら新しい投資信託に乗り換えるような無理な回転売買を繰り返していたら、いつまでたっても顧客に投資による成功体験を与えられないだろう。

一部原則を採用しない場合、理由の説明と代替案提示を求める

今後、金融機関に対し、どのように方針を浸透させますか。

:1月19日にパブリックコメント(意見公募)に付した『顧客本位の業務運営に関する原則』を金融機関が採択する場合には、顧客本位の業務運営を実現するための明確な方針を策定・公表した上で、その方針に基づいて業務運営を行うことが求められる。

 実施しない原則がある場合は、その理由や代替策をきちんと説明してもらう。また、方針を策定・公表した後の実際の取組状況についても、定期的な公表が求められる。宣言しただけで実行しない金融機関がないように、方針は分かりやすい表現での記載を求めるとともに、当局としてもベスト・プラクティスの実現を目指した対話を行っていく。

 独立系の投資信託運用会社など一部には、すでに顧客本位の業務を実現しているところもある。必ずできるはずだ。まじめにやっている金融機関が報われるようにしないといけない。新しい原則は3月にも確定・公表し、顧客本位の業務運営の本格的な実現を目指したい。