貯蓄から投資への流れ、仮想通貨をめぐる騒動――。長期・短期を問わず、おカネに関する話題は事欠かない。日々、目にし、場合によっては何かしらの判断を迫られる「おカネの話」。ではあなたは、おカネについて、きちんと教わったことがあるだろうか。
生涯を通じて大事なことだけど、他人はもとより親子でも突っ込んだ話はしにくい「おカネの話」。これに真正面から取り組み、親が子供に伝えるべき内容を実践的にまとめたのが、パーソナル・ファイナンスの米専門家が書いた新刊『「おカネの天才」の育て方』。本書から「子供とおカネの話をするときの14のルール」を抜粋、3回に分けて連載する。
ルール1:まだ早いと思う時期から、子供に話を始める
子供は3歳にもなると、おカネの概念を理解できるようになる。すごく幼稚な理解ではあっても、価値や交換といった概念がわかり始める。ウィスコンシン大学マジソン校の研究がそれを示している(※1)。
※1 Karen Holden, Charles Kalish, Laura Scheinholtz, Deanna Dietrich, and Beatriz Novack, "Financial Literacy Programs Targeted on Preschool Children: Development and Evaluation," La Follette School Working Paper no. 2009-009,2009.
また、3歳になると目の前のものを我慢できるようになる。これらは基本的だが、日常生活でのおカネの役目を理解するのに重要な知識だ。子供にクラシック音楽をやさしく教えてくれる「ベビー・モーツアルト」のように、子供向けにおカネのことを教えてくれるビデオはない。ギュッと抱きしめると、「安く買って高く売れ」と話しかけるウォーレン・バフェットのぬいぐるみもない。だからといって、小さな子供におカネの話をしなくていいわけではない。
小さな子供はなんでも知りたがり、それを理解する力がある。子供がクレジットカードを読み取り機に通すまねをしたり、ATMでボタンを押したがったり、あなたの財布の中を見たがったら、この本の教えのいくつかを伝え始めるといい。「まあ、子供ってかわいいわね」とクスクス笑いを漏らす代わりに、おカネがどこからくるのか、どうおカネを支払うのかを教えるきっかけにしてほしい。
幼稚園児はすべてを飲み込めなくても、あなたが何か大切なことを伝えようとしていることや、大人が気にかける何かを教えようとしていることに気づくはずだ。そして、おそらくあなたが思う以上に子供はあなたの言葉を吸収している。
ルール2:年齢に見合ったことを教える
おカネについては、本当のことを言うのがいい。だが、その子供のレベルに合わせて教えてほしい。もし仕事をクビになったら、小学生の子供には「外食は高いから、これからはもっとおうちでゴハンを作ろうね」と言えばいい。年金を取り崩さなければ食べていけないほど追い詰められているなんて打ち明ける必要はない。
同じ状況でも、子供が高校生なら、収入が減ったので大学の学費に影響が出ると言うのは許されるし、おそらくその方が賢い。大学の学費をこれまでのように貯めることができなくなるかもしれないと話してもいいが、それと同時に、以前よりも奨学金をもらいやすくなるとも教えた方がいい。
子供に生々しいおカネの話をするときには、たいていは本当のことを話すべきだが、かならず家族は大丈夫だと安心させてほしい。
ルール3:エピソードを話す
親が説教モードに入るとだいたい、子供は話を聞かなくなる。しかも、上から目線で「あなたのためよ」とでも言おうものなら、子供はたいてい逆のことをしたくなる。
それよりも、たとえ話で要点を伝えよう。私の友達が自動車ローンを借りようとした時、その前年に1カ月も豪勢なヨーロッパ旅行をしてクレジットカードの借金がかさんでいたために、まともな金利でローンを借りることができなかった。その話を子供たちに詳しくしたことがある(友達の名前は伏せて)。ちょっとしたおカネのしくじりがあとで大変なことになるという実際のエピソードを話してあげると、子供の心に刺さる。
前向きな教えも同じだ。10年間、毎月給料の1パーセントをコツコツと貯めていたお隣さんが、とうとう夢だったボートを買ったというような話である。身の回りのエピソードでいい。
ルール4:数字を使う。数字嫌いでもかまわない
具体的な数字を示すと、おカネの話は理解しやすい。子供には、「若いうちから確定拠出年金におカネを入れることが大事なんだよ」と言うより、例を挙げた方がわかりやすい。「22歳から毎月315ドルを確定拠出口座に入れておくと、65歳の時には100万ドル以上(1億円以上)になるんだよ」と言えばいい(子供はみんな、「100万ドル」にハッとするようだ)。
ガンガン数字を使いたいなら、オンラインの金利計算機を使ってもいい(私は、上記の例を出すのに複利計算機を使った。そうすれば、すごく簡単だ)。
(中編に続く)
子供に賢いおカネの習慣と金銭感覚を身に付けさせるために、「おカネの使い方」「貯金」「借金」「保険」「投資」「学費」「社会への還元」などについて、子供の年齢層に応じたアドバイスを保護者に伝授する。小遣い制をうまく定めるには? いくつになったらクレジットカードを持たせる? 安全に投資するための最も大切な概念とは? など、具体的で実践しやすい教えとその理由をお伝えする。
著者は、オバマ政権の金融教育諮問委員を務めたパーソナル・ファイナンスの専門家。
Powered by リゾーム?