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今回の下げが「政治リスク」が原因だからですか。「経済危機の「3年後」を調べてみました」でお聞きした、例のアレ。

居林:そうです。金融の世界と政治の世界は互いに影響を与え合っていますが、怖いのは金融市場に起因する暴落、いわゆるバブルのほうです。政治→金融のほうはたいてい中長期では影響はありません。ギリシャ危機しかり、ブレグジットしかり。

 おさらいしておくと、金融市場の暴走の場合は、「どう考えても説明がつかない価格の上昇」が起こり、「上がるから上がる」という状況にたくさんの投資家が巻き込まれ、それがある時一転して下落に転じる。そこから、株式などを担保に融資、あるいは自ら投資していた銀行など、一般社会の金融システムにまで信用不安が広がり、経済全体に広がる、二次災害、三次災害まで行くと「金融危機」と呼ばれるものになってしまいます。リーマンショックはもちろん、古くはアジア通貨危機、あるいはITバブル、みな「なぜここまで上がるのか」と思われていて、やっぱり落ちてしまった。

そして金融危機までつながった。今回はというと。

居林:金融市場は正常で、流動性もあるし、企業収益は下に向かっていますが高い位置にあります。割安感こそあれ、バブルという印象はない。

政治主導の金融危機は起こらないものなんでしょうか。起こらないとしたらなぜなんでしょう。

居林:政治というか、政府がわざと景気を悪化させて、金融危機を引き起こそうと思うことはありませんよね。起こしたい人はいないし、理由がないから。「起きてしまう」ことはありえますが、起こしたくて起こるものではない。

誰にもメリットがない。

居林:トランプ米大統領は、独裁者ではなく、政治家です。民意を得るには、不景気ではなく好景気をもたらさねばならず、株価暴落がマイナスに効くことはさすがに理解している。となれば、対策が取られる可能性は高い。

「本気でまずい」と米国投資家がパニックに

とはいえ、判断を誤って経済に悪影響を与えることはあり得ますよね。

居林:はい。今回のダウ暴落についていえば「トランプはディールではなく、本気で『アメリカファースト』だけを考えているのでは、合理性を失いかけているのでは」という不安が投資家に走ったことがパニックのきっかけだと見ています。具体的には、シリアからの米軍撤退と、それに抗議したマティス国防長官の辞任、そして議会の与野党不合意によるガバメントシャットダウン(政府閉鎖)、ファーウェイ副会長勾引。「わかってやっている」とは思えない出来事が相次いだ。その不安に苛まれて投資家が逃げだした、というのが暴落の大きな理由だと思います。

やっぱり、政治が金融に影響を与えているように見えますが。

居林:暴落という現象、結果そのものは、金融発も政治発も同じです。しかし、原因を取り違えてはいけません。金融市場のバブルが発端ならば影響は大きく、長引き、中央銀行というヒーローの登場を仰がねばならなかったりしますが、政治発の場合はある程度の長短はあれ、時間がたてば回復します。景気後退を自ら望む政治家はいませんからね。

トランプ大統領はそれすらわかっていない、という可能性はどうでしょう。