居林:それは、一面では正しいんです。でも、日本の貿易がGDPに占める比率はどれほどのものか。貿易依存度(GDPに対する貿易額、貿易額は輸出総額と輸入総額の合計)でいえば、2015年で世界の189位、3割以下です。

 例えば、米国市場への自動車輸出はうまくいくかもしれない、でも日本経済全体としては、ってことですか。

居林:「よくなる」方向は期待値で、裏付けはないんです。だから、ウソともいえないし「もっとよくなるんじゃないか?」という話を否定するのも難しい。レーガノミクスの再来と見る人もいますね。でも、全て期待値。期待値で出来ている相場は危ない。我々が顧客の資産のことを考えたら、ここから買いましょうとは言い難い。

 「米国市場が活気づいて、貿易が良くなって、企業収益もよくなるよね」と言われたら、答えようがないんです。構造的には正解ですが実際には程度問題。ネットバブルの時の「Internet changes everything.」は正しかった。イランの原油生産再開で供給過剰がさらに加速する、という見方も、それ自体は正しかった。でも、経済の大きなトレンドは、個別企業の収益を保証しないし、イラクという個別の国の生産量の変化は、世界の原油市場の需給に比べればあまりに小さくて、関係ない。

元気いっぱいか、風邪の症状か

 なるほど。この考え方は、イランの原油生産再開と原油相場の話で出たんですよね。

居林:そうですね。投資の「ケタ間違い」の話です。

 大きなトレンドラインを見れば、すでに日経平均のPERは17倍、TOPIXで15.5倍程度、金融政策はこれ以上の緩和は望めない。現状は、風邪を引きかけた人みたいなものかもしれません。本人はけっこう元気なつもり、でも、端から見れば「熱が出ているな、家で寝ていればいいのに」という。

 こういう構造の読み方は、レバレッジポイントをどこに置くか、因果関係のキーポイントをどこに見いだすか、が大事です。先行きの楽観論、悲観論とも、一番弱いチェーンの輪はドル高になったときに、トランプ政権が容認するか、しないか。煮詰めれば、そこがイエスかノーかで対立しているわけです。

 居林さんは「しない」と見るんですね。

居林:はい。国内最優先の路線が支持されて大統領になるトランプ氏は、世界が不景気になっても自国の景気を優先するでしょう。

 根っこのところで風が変わっていると思います。市場の天気は、いったん夏にべた凪になり、マーケットが動かなくなった。いま、トランプ氏が風を吹かせているので、みんな張り切っているけれど、「それ、北風だよね」と私は思う。「風が吹いている」ことだけをとらえるのはまずい。

 ここまで言って外したら大恥ですけどね。恥をかくリスクはあるけれど、言わないのは罪だと思うので、申し上げました。

 ありがとうございました!