居林:その結論は「米国が世界経済の一部として繁栄する」よりも、「自分たちの明日の生活を良くして欲しい」人が米国に多かったからです。ずばり、保護主義と言ってもいいし、自国経済優先主義とも言えるでしょう。ならば、そういう人々に支えられたトランプ氏の政権が、米国経済にマイナスなことをするとは思えない。

 新政権は米国に悪いことはやらない。やったら投票した人々が納得しないから。金利上昇は米国民の住宅ローンにとってマイナスです。米国の企業収益にもマイナスです。どうやって金利上昇を抑えるのかは正直読めません。ですが、日米の金利ギャップがそれほど開く事態にはならないでしょう。ということは、円安も続かない。

 ううむ…単純と言えば単純ですが…。

居林:単純ですが、大きな変化ですよ。米国を規定していたもの、国際間の自由な貿易を重視する姿勢がこれから変わっていくということです。まさしく、彼の政権で経済のトレンドが変わると言えるのです。今までとは違う。ここはわからないとダメです。

 その割に、悲観視する声が小さい気がしますけれど。

居林:それは「まだ政権が実際には運営していない」からです。どうなるか分からないので、皆さん、自分にとって一番いい可能性を考えることが出来るわけです。

 米国が保護主義を鮮明にし始める、って、何度も聞かされて麻痺していましたが、本当になったら大変なことではないですか。

居林:そうですよ。中長期的に見れば米国にもダメージが及ぶ方向転換で、全体最適ではなく部分最適を選ぶ、というか、戻る、という、とても嬉しくない結論です。

だったらなぜ今、株高なのか?

 う~ん、だったら、いまの株高傾向をどう考えますか。

居林:ですから、まさしく「マーケットが間違えつつある」という、この連載を読んでくださっている皆さんにとっては、とても興味深いタイミングを向かえつつあると思います。

 面白いのは、マーケットが珍しく「構造論」で間違えているということですね。ネットバブル以来です。

 ネットバブル、ITバブル。90年代後半から2001年くらいでしたか。NTTドコモが時価総額42兆円で日本一になったり、大赤字のアマゾンが300億ドルになったり。

居林:「Change everything! これからはネットが全てを変えるんだ」と、株価はぐんと上がりましたが、あっさり崩壊して、「世界を変えるからといって、企業収益の100年分を評価して買っていいわけはないよなあ」と、参加者が肝に銘じるようになりました。構造としての読みは正しいところもあったけれど、関連する全ての企業が急成長するわけじゃない。

 次期トランプ政権も、米国景気を良くするところまでは正しい。ですが、日本の景気を、世界経済をよくすることはない。なぜなら、彼の政権は保護主義に走るであろうからです。大変残念なことに、1989年ごろから続いたグローバリゼーションは、彼によって逆回転を始めるのだと思います。

 私の好きな言葉で、ジョージ・ソロスの「市場は常に間違えている。」というのがあります。市場の誤りは弓と一緒で、いっぱい引っ張るとその分反動が大きくなります。この辺で終わった方が本当は傷が浅い。私なら、日経平均が2万円を超えたらすぐに引き返しますね。

 とは言えですよ、米景気がおそらく良くなるんですよね。だとしたら、日本や欧州、中国企業にとっても、よい材料として捉えることはできないんでしょうか?