だんだん分かってきました。頭では構造問題に踏み込まねばと分かっていても、ものすごく面倒だから、とりあえずヒーローに再起動してもらいたくなっているのが現状なんですね。

居林:ウルトラマンだって3分しか持ちません。ずっといたらありがたみが落ちるんです(笑)。帰ってしかるべき状況です。日銀の国債の年間買い入れ額は80兆ですから、現状ですでに発行済みの35%を日銀が保有しているわけです。2年後に5割を超えるという試算もあります。流動性に問題が出かねません。しまいには発行額を超えてしまうかもしれない(笑)。

 中央銀行の量的緩和は、期間限定、カラータイマーが付いているべきです。政府の役割、財政政策につなげるべきなのに、それをずるずる引き延ばしているのは問題です。さらに米国が自国主義になる。中国は元からそう。というか、台湾以外はみなそうです。仲間がいないときに、日本企業が外でより稼げるか、国内でもいいけれど、より効率化していくためにどうしたらいいのだろう。これは国の問題でもあり、我々投資家と企業の問題でもあります。

 株式市場の先行きが心配ならば、ヒーローが帰った後をどうするか考えよう。やはり規制緩和が必要でしょう。痛みを伴うけれど頑張るしかない。誰かやっつけてくれないかな、と見ているだけでは、市場そのものが終わりかねません。政治の力と民間の力、両方が必要だと思います。

「やっぱり、シン・ゴジラ見るべきですよ」

 ちなみに、国債の日銀買い取りが延々と続き、流動性を失って新規発行を消化できなくなったとき、象徴的には何が起きるのでしょう。

居林:既発債の金利が上昇して借り換えができなって、国が予算を一気に削らざるを得なくなるでしょうね。そんなことはない、と思われるなら今のギリシャをご覧になると良いと思いますよ。中央銀行というヒーローは金融危機は救ってくれましたが、経済の構造改革まではやっていくれないのだと、しつこく強調したいですね。

 そういうお話なら、ぜひ「シン・ゴジラ」ご覧になるべきですよ。特定のスーパーヒーローや超兵器がない世界で、奇跡的に日本の政治と民間の歯車が噛み合って、未曾有の危機回避に挑むお話ですから。しかも、その手法がいかにも日本的。

居林:いいですね、独自性の追求、枠から出る。出るのは勇気が要る。その勇気を支えるのはイノベーション。それをどうやって支援していくのかという話になるわけですが。

 イノベーションは米国でどう起こったか。ひとつのきっかけは、IBMが景気悪化で1980~90年代に、大量に人員を削減したことにあります。ハーバードやMIT、理系文系のエリートたちが、食べるために起業してイノベーションが起こった。パロアルトに人が集まったのも、研究所の集積があったところに、食べるために人がやってきたわけです。米国でも日本でも、基本的に同じはずです。私、常々「追い込まれた日本企業は強い」と言っていますが。

 そうでした。そして映画でも、逆境に追い込まれたときの日本の組織の強さ、を描いているように思います。

居林:日本企業は逆境に強い。そして、日本の企業で本当に優秀な人は大企業の中にいる。そういう人々がもっとリーダーシップと独創性を発揮しないといけないと思います。現在の労働市場は流動性に欠けるので、そういうところを変えないと創造的破壊が起こりにくい。そもそもイノベーションは狙って起こせないので、数打ちゃ当る、で行くしかない。「悔しいなら頑張りなさい」と明言したサッチャーを見習うべきですね。

 サッチャー、そこまで言いましたか。

居林:マザーグースじゃないですが、「日本企業って、なにでできているの?」と聞かれたら、「製造業ですよね」と昔は言えた。今はサービス業に変わりつつある。じゃ、日本は世界にサービス業で打って出る日が来るのでしょうか。それには何が必要なのか。