居林:これはいいことなのか? 悪いことなのか? いいことも悪いこともあります。現状は、製造業の雇用が先進国から新興国へ移動し、その結果、先進国の雇用はサービス業中心に置き換わった。サービス業では1人当たり賃金が低い、すなわち限界生産性が低いという構造問題があり、これが、国内の貧富の格差問題につながっている。

 日本も米国も失業率が低く推移していますが…。

居林:内実は、賃金が低く上がりづらい雇用にシフトしているわけです。

 なるほど。

居林:企業に勤めて、勤めている間には昇給があって、という構造が壊れつつある。米国の雇用は介護、ヘルスケアが支えており、日本も一緒です。製造業のように新製品を出したり、研究開発投資があったり、設備投資が大きかったりするビジネスではないし、身体はきついし賃金が相対的には低くなりがちです。

 社会にも個人にも乗数効果が効きにくい産業にシフトしていく。それが我々の“環境問題”ですか。

居林:プラス、高齢化です。日本は、社会保障費の国家予算に占める割合が3割に達しました。米国は国防費(2015年で歳出予算の15%)を削って、医療費(同31%)へ回そうとしています。

 米国が、他の国のことより自国のお年寄りにお金を使わなければいけなくなってきた。

居林:そういうことです。先進国を巡る状況は芳しくない。まあ、そもそも、先進国はずっと先進国でいられるのか、という問いもありますよね。かつての日本のように、追いつく国が出てくれば、追い越される国も出てくる。「第二次世界大戦を戦った国」から「そうではない新しい経済圏の国」への移行期にいるのかな、と思ったりもします。

 こんな状況下で、世界唯一の超大国、米国の大統領選挙がどう戦われているのか、どんな国を米国民は望むのか? を突き詰めていくとどうなるでしょう。

面倒だから、ヒーローに任せたい

居林:「自由貿易主義」「自由なデモクラシー」を、あの国が標榜し続けられるのか。私たちは「?」を付けざるを得ない。米国経済優先、グローバル化の逆回転が起きかねない。クリントン氏が勝てば大統領が2人連続民主党、というのも偶然ではないでしょうね。

 米国は、いえ、米国でさえ、経済が左化し、大きな政府を指向しつつあるのです。「福祉を増やせ、他国の者をいれるな。世界のことは放っておけばいい」。そんな先進国が続々と増えていくでしょう。この状況は、世界経済を引っ張ってきた貿易がもたらしたものではありますが、これが反転するならば、貿易を経済のドライブ役にすることは難しくなるかもしれない。これに対する有効な回答がTPPだったんですけれど、推進したオバマの後継者のクリントン氏が、サインしないと言い出すまでに状況は厳しい。

 と、こういう“環境”を頭において、日本株を考えねばならないわけです。

 うわ、いきなりですね。

居林:はい、そこに話を落としていくのは難しいんですが(笑)。

 日本でも、雇用構造の変化を追ってみました。やはり製造業、建設業が減少しています。建設は最近でこそ景気がいいですけれど、その前は大変でした。増えたのは医療福祉(介護)、情報通信と、サービス業にシフトしています。

●2002年と2015年の日本の就業者数の変化(数字は業種別の増減を示す。単位:万人)
出所:総務省統計局(長期時系列表5(1)産業(第12回改定分類)別就業者数 - 全国)、UBS

居林:アベノミクスを支えてきた円安・株高、それを作った日銀の緩和策は、いずれは終わるんです。スーパーヒーローは帰ってしまう。残った政府はどうするか。グローバル化の逆回転で世界が自国優先主義になる中で、米国、中国を初め、世界とどう付き合っていくのか。政治、経済のあり方に、構造問題に踏み込まねばなりませんね。それなくばアベノミクスはその意味を失いかねません。