例えば、国内陸運がそうです。企業業績がどう変化していくのかは別にして、インターネットでものを買うという利便性とそれに伴う人手不足が、ビジネスモデルの変革を強いている。海運もそうですね。国内のメジャー三社が、何十年もの競争を経て、ついにコンテナ船で一つの企業に運営を集約することになりました。こういう動きは、業界のゲームチェンジャーになり得るレベルの影響を生みますので、投資家としては見逃すべきではないですし、自分なりの考えを持ってしかるべきだと思います。

 また、この十年に一度レベルの話は、個別企業ベースでも実は良く見られます。例えば、合併、設備投資、新製品、もしくは本社移転、経営層の交代といった大きな“賭け”に出ている場合は、「存続を賭けて、変化へ対応する」ことが目的ですから、投資家としては注目すべきでしょう。そして、個別の企業にとっては何年、何十年に一回の挑戦でも、これだけの数の企業が株式を公開していれば、ほぼ毎日、そういう決断を行った企業の銘柄があってもおかしくはありません(平日が約250日、日本で株式を公開している企業数が7月14日現在で3560社なので、計算上は14年に1度以上、個別企業に大きな変化があれば、ほぼ毎日ということになります)。大きな変化が起きそうで、それに備えて何かを準備している、変革中の企業を10社なり、20社なり探してフォローしておく。それが、凪の時の投資家のすべきこと、だと考えます。

 企業ごとの「勝負所」があって、そこにどう手を打とうとしているのか。そういう目で見ると、経済ニュースがだいぶ整理されると思います。ニュースが飛び込んできたときに、まず「この企業にとって大きな変革になるかどうか」を考えるわけです。

「勝負所」の分かりやすい目印が2つあります

 この連載では、基本的に個別企業のお話はしないので社名はご容赦いただきたいのですが、たとえば自動車業界のある大手メーカーは、今は動きようがないように見えます。米国はピーク、日本は縮小、設備投資はやるだけやった、電気自動車シフトはまだまだ先だし、全面対応すべきかどうかも個人的には疑問です。為替も動く要素がない。「大きな決断」は下し難い状況ではないでしょうか。一方、先ほどの海運業界は、共同運行会社の成否が生き残りに大きく影響します。これまで見てきた経験から言えば、追い詰められた業界ほど大きな動きが起こるため、株価の変動も大きくなるように思います。そのため、業界全体で赤字に陥っているような場合には、要注目と言えます。

 もうひとつ、まさしく何十年かに一度の大変化に対応しようとしている企業があります。業界に大きな変化が起きつつある……街角で見かける機会もとても多くなりました、あれです。そう、紙巻きタバコから「加熱式タバコ」や「パイプ式タバコ」へのシフトです。日本最大手の挑戦がうまくいくかどうか、市場の反応は必ずしも良くはないようですが、うまくいくと見れば投資のチャンス、ということになります。私の投資脳はこんな様に動いているという参考例として見て頂ければ幸いです。

 さて、そうはいっても、勝負所かどうか、うまくいくかどうか、それがはっきりしていれば話は簡単ですが、もちろんそんなわけはありません。企業が自ら「勝負だ」と宣言するときもあり、言わないときもあり、期待の新製品が鳴かず飛ばずは日常茶飯ですし、望外のヒットもあります。ざっくり言えば、そのニュースが企業の構造すら変革するものなのか否か、を見なくてはいけません。

 せっかく連載をお読みいただいていますので、私が使っている比較的簡単な目安をお話ししましょう。ひとつは、本社の売却・移転。もうひとつは、創業者のカムバック。このふたつは後がなくなって「背水の陣」を敷いている証であり、私はこのようなニュースには「おっ」と思って反応します。