居林:株式市場はもちろん世界とつながっています。利ざやを求めて世界中の市場で資金が出入りをしている。でも、実体経済の「グローバリゼーション」というのは、「中国が世界の工場になる」ということの言い方を変えたもので、中国が内需指向に転換したところで終わったようなものです。もちろん、「中国からベトナムへ、バングラディシュへ」は当たり前に続くけれど、先進国から新興国へ、の動きは終わったとみていい。

―― 先進国の製造業で、工場を動かせるものは中国やほかの新興国に移ったということですね。

居林:ええ。

―― GDPは「その国土」で生み出された付加価値の合計だから、それまで輸出で稼いでいたところが出て行って、残るのはサービス産業、その場所を離れては成り立たないものの存在感が大きくなる。海外子会社の配当は貿易収支に含まれているけれど、その数字そのものは大した比率ではない、と。でも、為替相場の影響も大きいのではないでしょうか。ドル安や円安が続けば、母国に工場が戻ってくる…。

米国の雇用はサービス業にシフトしている
出所:Bloomberg, UBS 2016年6月現在

居林:米国で見てもご覧の通りです。製造業の雇用が横ばい、ということは、新しい雇用が生まれていない。

―― つまり、為替がどう動こうが、工場は米国に回帰していない、ということですか。

居林:日本も同じですよ。

―― ううむ。製造業のお話はまた機会をいただくとしまして、シンガポールや韓国など、経済規模が小さい国を除けば、「先進国の経済は、基本的にその国、その経済圏でほぼ完結しているとみることができる」と。

居林:米、EU、日本、そして中国はそうなっています。ですから、たとえばDAX指数がどう動こうが、本来は、日経平均もダウ平均も関係は(皆さんが思っているほどは)ないはずなんです。

意外に早く事態が落ち着きを見せた理由

―― しかし、その視点で行くとですね、Briexitの“悲鳴”の影響は、案外大きく出ていないような気がしませんか。

居林:実はそうなんです。私は「U字回復」を予想していたんですが、こんな「V字回復」の様相になっているのは、やや予想外でした。

―― 今回は投資家諸氏も、さすがに学んだからでしょうか。

居林:そうかもしれませんが、ひとつの大きな理由は、勝利したはずの離脱派が、雄叫びを上げるどころか、悲鳴を上げ始めたことにありそうです。

―― 残留派だけじゃなく、離脱派も悲鳴を。

居林:国民投票が離脱と決まって、残留を予想していた世界中の投資家が「キャー」と叫びかけたところで、反対派からも「まさか本当になるなんて」という悲鳴が出て、「再投票を」という動きまで表れた。これを見て、パニックが本格的に起こる前に市場がやや冷静さを取り戻した。