一つは、政治的な問題が金融市場に与える影響を「投資」の視点からどう考えるのかです。基本的には、私は政治的な問題が金融市場に与える影響は短期的なものだと考えています。

 この件については、昨年のイギリスのEU離脱に関する国民投票の際にお話ししました(「経済危機の『3年後』を調べてみました」2016年7月1日付)。結論は、選挙結果、自然災害、金融危機は行き過ぎた水準まで株価を押し下げる。それが戻っていく際に、行き過ぎた下げ分を取りに行くという投資戦略は有効ではないか、というものです。

 今回もこの考え方が根底にあるので、北朝鮮情勢について、またフランス大統領選挙について、市場が懸念し(といいますか、懸念しすぎて)、ドル円が108円台に突入すると「ここからはいったん買ってよいだろう」と判断しました。もちろん、PERも大切な要因であり、この時は日経平均でみると14~15倍程度まで低下しました。いつも使っている日経平均株価と企業業績を重ね合わしたグラフ(図1)でも、株価がいったん下に振れていることが確認できます。

●図1
●図1
(出所:UBS)
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 加えて、世界の株式市場の中でも日本が最もパフォーマンスの悪い市場であった事(図2)もあり、リスクオフ(投資家がリスクを避け、安全性の高い資産に資金を移す状態)が、リスクニュートラルに戻るだけでリバウンドにつながるだろうと考え、短期のヒット狙いに見合うリスクと見ました。

●図2
●図2

 もちろん、北朝鮮情勢がさらに悪化する可能性はあったわけで、その場合にはどうなったかは私の想像の範囲を超えますが、そもそも本当に市場が北朝鮮との軍事的な衝突を懸念しているのであれば、円高ではなく、円安になっていたように思います。今回は円高が進むという結果となり、これは金融市場としては投資家がリスクオフの態度を取っているだけ、具体的にはキャリートレードで持っている円売り、ドル買いのポジションを閉じているだけ、と考えました。なお、この辺りは佐々木融さん(JPモルガン・チェース銀行市場調査本部長)がお詳しいので、こちらもどうぞ。

 私は、このような政治的問題が重要ではない、と言うつもりは毛頭ありません。毎日のニュースのトップに取り上げられるでしょうし、その行く末について議論が沸騰することもしばしばでしょう。あくまで、金融市場参加者の立場から考えるのであれば、「こうした非常時(イベント発生時)は、貴重な投資機会になり得るのではないでしょうか」ということです。株式市場では、株価の下値が限られていて、上値があるという状況は通常起こりません。教科書が言うように、情報は行き渡っており、投資家は合理的に行動し、裁定取引が行われ、あっという間に「利益の上がる状況」が失われる。経済学の基礎ですね。

 それが変わるのが「イベント」時です。トランプ大統領の誕生も、ブレクジットもそうです。これらは今までの既定路線を変更するような大きな出来事なのですが、問題は、金融市場につい過剰反応してしまう傾向がある点だと思います。そこに投資機会が生まれます。

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