その10年ほどの間でも、業績のトレンドと株価がかけ離れてしまったことがありました。たとえば、“小泉改革”のときです。

TOPIX500の予想PER倍率の推移

 小泉改革の時には、予想純利益に対して22倍のPERで株式が取引されていました。「株式会社日本の改革」だとして割高な水準まで買われたわけで、これは海外投資家の熱狂(第2回の言い方を使えば、「ケタ間違い」)とも言うべきものでした。業績は2007年3月期から明確に勢いを失い、株価は2007年まで高水準を保ったものの、その後リーマンショックで大きく下落しました。

 これとよく似ている最近の現象が、2016年前半のコーポレートガバナンスによる「日本企業の覚醒」期待です。日経平均株価の予想PERが18倍程度まで上がりました。ガバナンス改革が本当に出来ますか、出来たとして企業収益がどの程度上がりますか? という、一番左の桁の(一番重要な)問題をなおざりにして、海外投資家がどこまで買うのか、というゲームになってしまったのだと思います。

予言の背景、実は単純

 逆に、日本株の割安な時が見逃されていた例もあります。2012年の春から夏にかけてです。

 ドル円が80円になったことに加えて、日本企業はその前年の東日本大震災とタイの大洪水のトリプルパンチ、という状態でした。しかし、2012年の夏の時点で2014年3月期は大幅増益になることは見えていました。私は当時これを「負のバブル」と呼んでいましたが、理由は単純な自律反発です。

日経平均とTOPIXの予想純利益(2012年秋)

 円高が進んでいたものの、日本企業の円高対応のためのコスト削減努力も進んでいて、業績予想を示す赤い線は、コンセンサス(※編注:証券会社の予想の集計)でも私たちの予想でも、明確な上向きになっていました。予想PERはなんと11~12倍と、近年の日本市場ではなかった低水準で、アメリカ市場の13倍よりも下。これは私の記憶している限りは初めての事象でした。

 2012年11月の「日経ビジネス」で私が「2013年は円安の始まりの年」と書き「企業収益の回復」と「日銀の豹変」を予測したのはこうした背景があったからです。自民党政権の誕生はすでに見えていましたから、政治的にも何か手が打たれるはずで、それは円安につながるはず。そうしたら、ただでさえ著しく低水準な業績からの回復ですから、力のある日本企業の利益(と株価)は大きく上がるはずだ、という読みでした。