居林:もちろん予想はしていませんでした。でも、問題は、株式市場の期待値が楽観だったか悲観だったか、なのです。予想と逆なら大きく振れる。トランプ旋風で、よい展開を期待している市場に、このニュースは覿面(てきめん)に効きました。さらにフランスの大統領選挙もあり、マーケットを脅かす要素が次々に現れてきた、との不安が高まって、為替はドル安になり、日経平均は19600円から18300円へ下落した。

 これは、クラシックな「期待値先行が崩れる」パターンです。冷静に考えれば、北朝鮮でこれから何が起きるのか、シリア情勢も、フランスの大統領選挙の結果もその影響も、何一つ誰にも分かりません。でも、期待値が高まりすぎたものを冷やすには十分な材料です。

 そういうものですか。

10年分の投資効果を先取り

居林:ええ。例えば、同じ状況がものすごく株価が低い時期に起こっても、これほどは下げません。株価が高いから、こういう影響が出るのです。

 ああ、前回のお話ですね? 「景気と株価は関係ない」。

居林:そうです。株価が上がるのは、現在の株価が割安だからですし、下がるのは割高だから。株価が高すぎれば、たとえ景気が良くても悪いニュースに影響されて下がりやすい。

 今回は、トランプ旋風がまずあり、それをどう見るかが重要な分かれ目でした。「これはファンダメンタルズだ」と思った方は「(長期的に)上がっていく」と判断した。一方で、「これは長期の話を短期で織り込んでしまったんだ」と、私は考えました。

 「3」の話ですね。どういうことでしょう。

居林:例えば、トランプ大統領は初の施政方針演説で、「インフラに1兆ドル(日本時間3月1日発表、その時点の為替相場で約113兆円)を投資する」と言い出しましたが、これは10年間の累計です。単年度で割れば約11兆円ですよね。

 このときニューヨーク市場のPERは17倍になりました。これは歴史的に見てもかなり高い数字です。10年間という長期に渡って行われる投資の効果を、株価は早々に織り込んでしまったように私には思えます。だいたいPER12~13倍が米国の平均ですからね。先々の影響を今の期待値として一緒にしてしまった。ゆえに高すぎる。

 なるほど…。

オーバーシュートこそ投資のチャンス

居林:現状の「下げ」も、短期と長期の材料を区別していない。実際のところは誰にも分かりませんが、半島の情勢が朝鮮戦争みたいな大惨事になる可能性は少ない。あって一時的な緊張や一瞬の軍事衝突で、それは1年後、2年後の株価には関係ありません。フランスの大統領選挙に至っては、日本の株価に何の影響があるのか分かりません。しかし、マーケットは今の材料として反応します。「売る人がいるんじゃないか、だったら先に売っておこうか」と思うからです。

 そもそも、フランスの大統領選が長期に日本株に影響を与えると思いますか?

 いや…どうなんでしょう。

居林:そう思っている投資家は少ないと思いますが、それでも「他人がそう考えるだろう」と考えることで株式市場は「短期の材料」も織り込んでしまうのです。この前までは、トランプ政権によるアメリカ景気回復という「長期の材料」を先に織り込みすぎていたわけです。私の言葉で言うと、「マーケットは、短期の材料と長期の材料を区別できない」ので、どっちも織り込んで反応してしまう、ということになります。

 まさしく、株価は他人が決める、情報格差がある、本来関係ない政治イベント…ブリクジットだって株価になぜ影響したのかを説明するのは難しいですからね、などなどに、一瞬、反応するのです。「こうなったらどうしよう」という出来事の影響を先読みして、今の株価で織り込んで反応してしまう。それがオーバーシュートに繋がる。

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