居林:例えば、私という人間を「男か女か」と問われればそれは男なわけですが、それが私という人間の特徴を示しているということにはならないわけです。よって、「投資家として自らを特徴づけ、これを以てマーケットからリターンを挙げる」という、自らの武器の定義はもう少し具体的であってよいと思います。

 その意味で、私は自分が「マーケットタイマー」だと信じて行動しているわけです。 当然、ストックピッカーとしての自分もいますし、今回のような地政学的リスク、政治リスクの高まりに対してどう考えるのかという「イベントドリブン型」の投資も要素として入ってはきます。しかし、自分が投資家として何者であるのかということを考えるのは、自らのアイデンティティを決めることに等しいと思います。

 例えば、ウォーレン・バフェット氏はどうなんでしょう。「バリュー投資家」の代名詞ですね。

居林:ええ。私は「彼はストックピッカーとしての側面の方が大きい」と、個人的には思いますね。しかし、彼は2008年10月に「Buy American. I am.」、すなわち「今こそアメリカ株を買うべきだ」という、私から見ればマーケットタイマー的な寄稿をニューヨークタイムズにしています。

 これは非常に印象的な文章で、今でもよく覚えています、リーマンショックの真っ最中によくも書けたと思っていました。偉大な投資家はさまざまなすぐれた点を持っているということだと思います。

(※ ニューヨークタイムズの記事はこちら

 元に戻りますと、ストックピッカータイプの投資家の方、つまり、特定のある企業が、「今後こう成長する」という信念がある方は、私の投資スタイルを基にお話しているこの連載の内容は、納得のいかないことも多いでしょう。マーケットが行き過ぎだからと言って、これから倍になると信じている銘柄を売るかといえば、そうはならないからです。

 なるほど。

居林:市場の動きがどうであろうと、株価が上がっていく企業は存在しますから。経営に関わっている方や、その業界に精通した方ならば、そういう株式を見つけることもできるでしょう。そういう方は、ご自身のスタイルは変える必要はありません。マーケットタイマーの見方を参考にしていただければ、と思います。

下げる方向へのオーバーシュートが起きている

居林:私の場合は、マーケットの「行きすぎ」、オーバーシュートをおおよそ判断できると自負しています。もうお分かりと思いますけれど、行きすぎには「上げすぎ」も「下げすぎ」もあります。

 そうでした。その「上げすぎ」「下げすぎ」の判断の基準は企業収益、端的に言えば株価収益率、PERでしたね(PER=Price Earnings Ratio。株価と企業の収益力を比較する指標。 時価総額÷純利益)。予想される企業業績と現在の株価を比較する。居林さんの説では、「現在の日本市場の適正PERは13~15倍」とのことでした。具体的な解説はこちら(「或るプライベートバンカーの株価の読み方」)で。

居林:そうです。そしてほぼ1年前に始めたこの連載の期間に、日本株は下げて、「トランプ旋風」で上がり、そして今、また下げに転じた。上の行きすぎも下の行きすぎも見ることができたので、ここで一度、連載全体を整理しつつ、実際に投資のチャンスが来たことをご説明しよう、と考えたのです。

 ということは、今は下げる方向でのオーバーシュートが起きている?

居林:日経平均は先週、1万8300円を一時切るところまで下がりました。前回は撤退をお勧めしましたが、この急激な下げを見て、逆に「エントリーポイントが近いな」と思い始めました。株価は、プラスの過剰反応からマイナスの過剰反応に振れつつあると思います。その幅はまだ小さく、去年の2月や、8月のブレクジットほどではない、逆に言えばリーズナブルな、この程度は珍しくない振れ幅のようです。

 それでは、解説をお願いします。

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