ここ数年の日本企業の業績は好調ですが、売り上げはリーマンショック前を超えていません。そして、負債比率は下がっています。グラフの赤線、純利益の右肩上がりは、利益率の上昇によって牽引されているわけです。

 この結果、利益率はここ20年ですでに最高レベルまで上がっています。さて、企業の経営者は、純利益率で過去最高水準(金融を除いて4.5%程度)にあるときに、さらに利益率を上げようとするでしょうか?

 それはない、と私は思いました。将来の売り上げを伸ばすためと称して、マーケティング費用、ブランディング費用、研究開発費を増やすのではないか。だから、赤線は横ばいになっていくのです。

 それでも株価が2万円を超えてさらに上がるというならば、大幅な円安を想定する必要があります。当時、「米国は2016年に3、4回の利上げを行う」と言われていました。米国の企業収益が前年同期比でマイナスになりつつあるときに、本当に3回も4回も利上げするのでしょうか?

 私には疑問でした。仮に利上げをするとしても、130円を超える円安というのは政治的に受け容れられなかったのではないでしょうか。

 「ドル円」の議論は、私に言わせれば千の位の議論です。それは、日本企業の業績に直結する「決め手」の一つだからです (ドル円と日経平均がリンクしているというグラフを見ることがよくありますが、これはドル円が日本企業の業績に直接リンクしているからです) 。

 一方、日本企業のコーポレートガバナンスの議論は非常に重要ですが、企業の経営陣が革新的に意識改革をしない限りは、2015年前半時点の株価予想の観点からすると十のケタの議論だったと思います。

日経平均は戻る。ただし2万円には届かない

 では、2016年4月現在の「今」は、どうなのでしょうか?

企業収益予想と日経平均の推移(2016年4月時点)

 株価のラインは業績予想ラインよりもかなり下に位置しています。従って、基本的には現在の日本株は割安といってよいと思います。問題は、この業績予想ラインが横ばいか、やや下を向いていることです。

 最近の円高の水準が今後も続くと、この赤いラインはさらに下がることになります。もしドル円が100円に近い水準まで円高になると思うのであれば、今からでは日本株は買えないでしょう。逆に我々UBSの見解のように、ドル円が117円程度まで“回復”すると見ているのであれば、ここは良い買い場になるはずです。

 しかし前回も申し上げましたが、今年の相場はかなり大きく荒れます。ですから正直言って予測は難しいですね。今の予想では、株価は今後1度は戻るかなと思います。

 なぜかというと、日本企業の業績予想ラインはもう少し下を向くとしても、現在の株価の位置よりもかなり上に位置するはずだと思うからです。

 また現在のドル円の水準では、今年は米国の利上げがないか、あったとしても1回のみという予想が織り込まれているように見えます。今年に入ってから外国人投資家が5兆円近く日本株(現物+先物)を売っている現状を考えると、金融市場では日銀のマイナス金利政策もまったく効果がないものとして扱われているように思われます。

 私は「マイナス金利は、もしかすると企業の余剰キャッシュを動かすきっかけになるのではないか」と思っています。金利を払うくらいなら配当に回す、という判断が出るのでは、ということです。2015年3月期に減損などで大きく利益を落とした企業のうち、2016年、2017年3月期にかけて利益の伸びが見込め、かつ配当利回りが高い企業の株を買っておくのは悪いアイディアではないと思います。 

今回も日本企業は、利益率4%以上を目指さない

 ただし、日経平均株価の戻りは2万円に届かないと思います。「戻っても1万9000円、そこまでいったら万々歳」というのが今の私の見解です。

 日本企業のファンダメンタルズ、つまりいちばん上のケタは企業業績、もっと端的に言えば利益率だ、と私は思っています。そんな私が、日経平均はここから(2割3割“程度”の上下動は起きつつも)じりじり下がっていく、1万9000円は超えないだろうと見ている。ということは、つまり、利益率はもうこれ以上上がらないと考えているわけです。

 今、日本企業は経営にコストを掛け始めました。設備投資を進め、人件費を引き上げ、研究開発やマーケティング費用を積み増すような状況下で、利益率が上がるわけがない。実際に、小泉改革の最中でも同じ現象が起きました。2015年の例でも申し上げましたが、利益率が4%を越えると、企業は更なる利益率の改善よりも投資に移行するのです。

 これは、日本企業の経営のメンタリティががらっと変わって、利益率やROEの水準に対する意識が大幅に向上しない限り、これからも同じ事になると思います。