このように本当に重要なケタを見ないという間違いを、良くも悪くも市場全体が起こしてしまうこともあります。

 そして、それこそが正に最初に言った「行き過ぎ」であり、投資のチャンスというわけです。目先の材料やニュースによって株価が動くとき、それが正しい動きなのか、もしくは市場が間違えているのか判断する「物差し」として、「一番大きなケタがどこなのか見極め、長期にわたって注視する」、その大切さも、お分かりいただけるのではと思います。

日本株の一番左のケタは…

 では、「日本株全体の一番左のケタ、一番大切なものは何ですか」と言われれば、それは企業収益予想のトレンドラインであり、それに対して現在の株価がどこに位置しているのかだと私は思います。ここで言う企業収益は過去の収益ではありません。今期、来期、将来の企業収益を投資家がどう予想するのか、これが株式市場の「決め手」なのだと私は信じています。

 ここまで読んできて、「なんだ、そんなことか」と思われた方は、次のグラフをご覧ください。 

企業収益予想と日経平均の推移(2015年6月時点)

 これは、2015年の6月に日経平均が高値を付けた時点の、日本企業の12カ月先の企業収益予想(赤線)と日経平均(青線)を並べたものです(※)。2010年の時点から見てみると、赤い線の周りを株価が行ったり来たりしていますね。大切なのは、業績予想のトレンドラインが今後どうなるのか、そして株価の現在位置が業績予想のトレンドラインと比べて大きく上にいるのか、下にいるのか、それとも線上なのか、ということだろうと思います(企業収益予想の出所は、BloombergとUBS)。

※このグラフの青の線と赤の線の位置関係は、意図的に設定されています。株価と業績の関係性、つまり適正PERがどの水準にあると想定するのか、そしてそれがどのように決まると考えているのか、によって、赤い線と青い線の位置関係は変化します。この部分は、株価バリュエーションの話になるので、今回は触れていません。そのため現状では「恣意的なグラフである」とのご批判をいただいても無理からぬところと承知しております。株価バリュエーションは大切なポイントなので、次回以降ご説明していきたいと思います。

 トレンドラインを構成するのは、今期、来期の業績予想をベースにした12カ月先の業績予想ですから、将来の時点での12カ月先の予想も作れるわけです(最大で12カ月先の12カ月先、つまり2年後の予想まで作っています)。従って、赤い線は将来時点まで伸びています。これが将来株価のガイドライン、私にとって千の位です。

 どう使えるのか、例を挙げて見てみましょう。

 株価が収益予想のトレンドラインを大きく上回っているとき、たとえば2015年の2月頃ですね。「日本企業はコーポレートガバナンスコードの導入で覚醒する」「米国が利上げに動くのでもっと円安になる」、よって「日経平均は2万円どころか、もっと上昇する」と言われていた時でした。

 当時、日経平均は2万円を超え、来期予想株価収益率(PER、「時価総額」÷「純利益」)で見ると17~18倍程度で取引されていました。すでに割高感が出ている水準です。注意していただきたいのは、その時点ですでにこの赤い線は、先々横ばいになっていくと分かっていたことです。

 私はこうした予想に非常に懐疑的でした。もしかしたら、日本企業は覚醒するかもしれません、してほしいです…。でもそれで企業収益がどのくらい良くなるのでしょうか?

「ガバナンスコード」はどのケタか

  ガバナンスコードの導入を受けて、配当が重視される? そうかもしれません。でも増配したところで株主資本は大きく減少したりはしませんから、たとえば株主資本収益率(ROE、「1株あたりの利益、EPS」÷「1株あたりの株主資本、BPS」)にはほとんど影響がありません。

 ROEを上げるには、大幅な自社株買いと利益の増加が必要です。でもグラフの赤線の通り、企業収益はここから上がらずに横ばいで、もし円高が進んだら下を向く水準です。「それでもそんなに強気でいいんですか?」 というのが当時の私の気持ちでした。

 なぜそう読んだのか。それはこのグラフで過去を振り返れば分かります。過去のマーケットで経験したことは、未来の相場を読む際に役立ちます。いや、役立てることができなければ投資家として生き残れないと思います。