ええと、つまり、そもそも株価がそれほど上がる状況ではないのに、政治イベントとして「アベノミクスが続く=株価にプラス」という海外投資家の思い込みによって上振れしたと。それが昨年末の状況ということですね。

居林:はい。そしてその思い込みが逆方向に効いた、安倍政権が終わるのではないかという「アベグジット(Abexit)」への恐怖感が、今回の日本市場からの海外資金の流出を招いた、ということだと思います。

 ここでもういちどさっきの図を見て下さい。

 17年10月の、衆議院総選挙の時点で線を引いてみると分かりやすいです。10月の始値は2万400円。ここから10月の終値2万2011円まで急上昇して、さらに上値を追う展開になりました。

 これは、自民党の予想外の大勝利を海外投資家が「アベノミクスが続く!」と、経済イベント(内実はすでに政治イベントなのですが)として評価した分。で、例えば10月の終値、2万2000円前後を基点として今回の下げを見ると、まあ、一時的にこのくらい下げるかな、という程度に見えますね。

 先週末、23日の安値が2万599円。ほんとだ。総選挙前の株価と大差ない。

すでにアベノミクスは政治イベント化している

居林:アベノミクスにはここ1年間新機軸がない。とはいえやることはやって、世界経済も良かったので株価は伸びてきた。それが世界的な修正の中で押しつ押されつされている中で、森友問題などの追及が激しくなって、アベグジットを恐れる海外投資家が反応した。

 ただし、今年に入って6.5兆円強売ったといっても先物の売りが半分以上を占め、この分はクオンツファンドやアルゴリズムトレードのファンドがボラティリティ(株価の変動幅)の高まりを見ていち早く売ってきたものと見ています。

 現在はそれに加えて現物をもっている投資家が売っている時期ですが、株価が落ち着きを取り戻せば先物の買い戻しからマーケットのリバウンドが始まると見ています。、。何より、ほかの市場参加者よりかなり悲観的に企業業績を見ている私の予測から言っても、この水準は低すぎます。ですから現状は買いです。アベノミクスが政治イベント化していることを見抜けなかった海外投資家の、パニックに乗ずるチャンスです。

 ちょっと待ってくださいね。それは、安倍内閣の退陣は当分ないと居林さんが考えているってことでしょうか。そうじゃないですよね。つまり、アベグジットがもし実現しても、日本の株式市場には大きなマイナスの影響はない。ということ?

居林:はい。すでにアベノミクスは「安倍内閣が存続するかどうか」の政治イベントになっていますから。逆に言えば、現状、アベノミクスでなくてはならない、安倍政権でなければできない「新たな」経済政策って何かあるでしょうか。黒田総裁が大胆な金融緩和を続け、消費税は後ろ倒しになり、という、金融緩和と財政政策の同時進行が経済イベントとしてのアベノミクスでしたが……。

 すでに矢は尽きた。退場しても悪い影響もない、と。意外です。現状を作り出した政権が変わること自体がリスク、とは考えない。