居林:ちょっと違います。

 アベノミクスは2012年12月から開始され、13年3月、日本銀行総裁に黒田東彦総裁が起用されたことで火が付きました。本気で金融緩和をやるんだ、という宣言となり、東日本大震災と超円高で受けていたダメージから、企業収益が回復してくることも重なって、我々も「ものすごくプラスの影響を持つ経済イベントだ」と捉えて、過去にないくらい強気の予測を出していました。

 なるほど。スタート時点はまぎれもない経済イベントだった。

居林:そうです。しかし、アベノミクスは昨年の衆議院選挙、17年10月22日時点では、経済というよりも政治的なイベントに変容していたと思います。

 大きな理由は、経済政策がほとんど変化しなくなったことです。アベノミクスの中心たる日銀ですら、最後の変化は16年6月のブリグジットの後に、ETF(上場投資信託)の買い入れ額を3兆円から6兆円にしたことで、それ以降実質的な新しい打ち手はありません。つまり、経済イベントしてのアベノミクス、黒田・安倍コンビはすでにやれることはほぼやった状態になっていると思います。

 経済に対して何をするかではなくて、いるかどうか、選挙で勝つか、総裁続投かどうかが注目されている。なるほど、経済というより政治イベントですね。

居林:さすがに、日本の投資家はそのあたりに気づいていると思いますが、今の日本市場を左右するのは海外投資家で、彼らはアベノミクスの終わりが日本の企業収益と景気の回復の終わりだと思っている可能性があります。こちらを見てください。

居林:アベノミクスの開始から、昨年、17年までの海外投資家の買い越し額累計は約14兆円。これに対して、1月から3月12日の売り越しは約6.5兆円。直近はもうすこし進んで6.6兆円になっています。どういうことかというと、5年間で買った日本株の40%以上が、3カ月弱で売られてしまったということです。

海外投資家が「ABEXIT」への恐怖に動揺

 うわ。そりゃ日経平均も下がりますね。

居林:そもそも、経済イベントとしてアベノミクス、特に最初の黒田バズーカが決まった時の印象が、海外投資家にはあまりに鮮烈なのです。13年初は4カ月で6.8兆円の買い越しが入りました。

 大きな期待を集め、実際に株価も上がった。

居林:海外投資家にとって、安倍政権の経済運営への期待感が大きく強くなるにつれて、「アベノミクス=株高」にすり替わっていったんですね。

 昨年の総選挙で安倍政権が予想外の大勝を収めて、株価も上昇しました。これは、海外投資家がさらに10~12月で2.1兆円を日本株に投じたことによるものです。

 しかし、当時すでにアベノミクスが打てる施策は出し尽くしていた。我々は「政治イベントしてプラスに出ているが、企業収益に対しては意味がない」と見ていたのです。実際、企業収益はたまたまその後、米国の税制改正でプラスになりましたが、繰り延べ税金負債の取り崩しで1.7兆~1.9兆円分ゲタを履いているだけで、来期脱ぐことになります。これは前回お話ししたことです(こちら)。