居林:はい。そのとおりです。「今の株価水準は割高ではない」については、その通りだと思います。ただし、今見えている収益の水準は一時的なかさ上げが入った値で、今後もこの調子を維持できるかどうかは疑問。現状がピークで、なまじここで期待が高まってしまった分、業績が下降に――減税のゲタが脱げますから、本業が横ばいなら来年の今頃はマイナスの企業収益に見える――転じた際の失望が大きくなって、転換点になるのではないかという気がします。投資家として株式市場、企業業績を見るうえでの判断の分かれ目と言えるのではないでしょうか。

居林:グラフは、TOPIXと1年先の業績予想(コンセンサス)をプロットしたもので、株価はおおむね、この緩い曲線状を往復するんです。これで見ると、株価は今、ややわずかに割安です。PERで15倍くらい(TOPIX)。安く見えますが、1年後はどうなるか。

 経済危機が来るとは考えにくいですが、業績にはゆるやかながらピークが見え、2018年の10-12月は業績は(意味があるかどうかは別にして)表面上大きなマイナスになることが考えられます。それを除外して考えても、日本企業の利益率がこのまま保てるのか。設備投資が大きくなり、人件費は上がっている。オフィスの賃料も上昇中。利益が更に上がるよりは下がる状況。投資家としてはそう考えるべきでしょう。

投資家であるなら、とは、居林さんらしい表現ですね。

居林:自分自身が投資家になるかどうかの分かれ道にある、くらいには思いますよ。IoTのストーリーを語り、EVの将来を読むのもいいですが、未来は明るくても企業収益は振れるのです。ストーリーは買えても株価は買えない。経済評論家と投資家は見る目が異なる、と私は思います。ストーリーは素敵でも、下がり始めたら注意しないと。2018年はそんな年になるでしょう。

転換点を前にしている

ついでに聞かせて下さい。居林さんの言う「投資家」には、ナノセカンドでサヤ取りするプログラム売買や、10年間インデックス投資をすることも入っていますか。

居林:超短期の変動は、業績予測や産業の将来を考えるのとはまったく別のもので、大きな波を考える際には無視できるブレだと思います。超長期インデックス投資については、UBSウェルス・マネジメントも、例えば「10年間インデックスの株式投資は有効」と考えています。

 その上で、あくまで自分個人の見方ですが、投資家のスコープとしては、「その人が見えるところまで」が正しいスコープだと思うんです。見える、とおっしゃるなら10年でもいい。でも詳細にモニタリングする必要性を考えれば、私に見える先はせいぜい1年、最長で2年ではないでしょうか。

 投資家は株価と業績予想のトレンドを重ねて上か下かを見よ。極端に高ければ「哲学と理屈」で売り、下なら「胃薬」で買い。市場全体の気分、意識と、自分の哲学、理屈、胃薬を備えて戦い、利益を上げる。でも、業績予想が大きな転換点にある時がある。今回はそんな所に私たちは立っているのではないか、というお話でした。