居林:DTLは普通、3~5年分を積み立てます。そのうちの減税分が一気に今期の決算で利益計上されるので、インパクトが大きくなるのです。例えば、トヨタの2017年3月期の税率は前期の29%から-12.7%になっています。会計上は税金がプラスからマイナスになっているということですが、このくらい大きな話です。もちろん、税前利益には関係がない話なのですが、純利益やEPSには直接影響します。

 ということなので、株価が高いか安いかは企業収益で考えるべきだと言いながら、この10~12月は実力とはかなり離れた数字になるはずで、同時にそれが、今回市場のぬるま湯を熱くしましたが、次回は冷ます可能性が高い、と考えているわけです。

「企業収益がいい」というヘッドラインに踊ると……。

居林:今は適正価格な水準ですが、「割安だ」という判断になると半年後には状況が変わっているかもしれませんね。

そういえば、先ほどおっしゃった2016年の原油暴落による業績へのマイナスの影響ですが、不勉強ですみません、なぜ特別損益に影響したんですか?

居林:2016年3月の決算ですね。原油、石炭、銅、その他のコモディティの市況が悪化すると、持っていた権益の評価額が下がり減損が発生する企業があるのです。

IFRSで特殊要因が見えにくくなった

油田とか鉱山とかですか、じゃあ、商社?

居林:商社への影響が大きかったけれど、化学プラントなどもそうですね。海外子会社に関連工場がある企業も多い。今じゃ考えられませんが、シリコンウエハー工場もケイ素の価格が下がるからと減損したりしていました。おかげで、今は減価償却が終わって利益率が上がっています。他には、中国の不動産の下落の影響もあったかな。「何で日本企業は、このタイミングでこんなに減損処理をするんだ?」と、海外の投資家に説明するのに苦労しました。

だったら営業利益で本業を見ればいいのに……。

居林:IFRS(国際会計基準)導入後、日本では特別損益に入るような減損が米国では営業利益に入るようになって見えにくいのです。ワンタイムロスなのか実力なのか、判別しにくくなっている。日本の会計基準には逆に特別損益がありますから、同じ物差しで比較するためには日本企業も米国企業もアジア企業も純利益でわざわざ見ようとするんです。説明はもちろんしますよ。でも、トレンドを見る際にはどうしても、個別の企業ではなく横串を刺して考えるので、一時的な影響を避けることが難しくなっていると思いますね。

 最近多くなっている、AIなどが投資判断するようなファンドが増えれば、この辺りはさらに重要な論点になるような気がします。デジタルな部分が増えると、人間が考えて判断する部分がさらに重要になる、というのは個人的に感じているところです。

なるほど。もう一度まとめますと、株価は企業業績の関数、といえど、時にはそれが成り立たない異常値が出ることがあって、直近の2017年10~12月は米国の法人税制の変化でまさにそうなっている、ということですね。