仕事柄、買ったことがないので分かりませんが、そういうものなんですか。

居林:「クルマを持っていると、コスパが悪い」といわれて「所有する喜びがあるじゃないか」という反論がありますよね。でも、投資家ならば問うべきなのです。「そう? では、所有する喜びはいくらになるの? 例えばレンタル料金よりいくら上乗せするの?」と。

あああ。なるほど。

株は「リスクを買う」ものだ

居林:REIT(不動産投資信託)はちょっと別かもしれませんけれど、基本的に私は、株を買うとは「リスクを買う」ことだと思います。投資家にとって、株式投資で得るものは「リスク」と「リターン」の可能性です。ほとんどの個人投資家にとつて株価は「リスク」「将来のリターン」の値段であって、会社の一部を所有することの対価ではありませんよね。損するかもしれないリスクを負って、リターンを得ようと参戦する。そこに「所有する喜び」のような定性的な意味を持ち込むと、理屈で割り切れず、迷いが生じます。

 投資家は、まず自分の行動原理を決める。それは自分の哲学によって決める。私の場合はそれが「株価は企業業績の関数で、それ以外は中長期的には一時的な作用」というわけです。

 今の市場環境について私と同じ意見でなくてもまったく構いません。しかし、せっかくこの連載を読んで下さっている方には、「周りの人がみんな買いだと言っているから、私も株を買う」という行動はとってほしくないのです。

「リスクを買う」とのことですが、株価は変動しますが、リスクの量も増減するんじゃないでしょうか。先ほどおっしゃった、「政治リスクは一時的」というのは「本当かな」と思うんですが。

居林:「投資リスクは常にある。そして、その量はほぼ一定」くらいに考えた方がいいと思います。歴史を振り返れば、同じようなリスクを前にも経験し、吸収していることがほとんどだからです。例えば英国のEU離脱(=ブリクジット)の際の経緯と市場の反応は、1998年のEU創設のためのマーストリヒト条約への、英国の批准をめぐる騒ぎとそっくりです。

「買わない=幸せを逃がしている」

面白いですね。ということは「史上初だ」とみんなが思っている出来事には、ちょっと眉唾だと見たほうがいいのかな。

居林:でも、乗せられてしまうのですよ。

 たとえば今日は冬にしては暖かい、気温が20度になりそうな日ですね。ジャケット一枚で外を歩ける。「じゃ、明日はもっと温かくなるな」と、Tシャツで出社しますか?

風邪を引きます。

居林:そう。誰もそんな馬鹿なことはしない。「たまたま温かくなっただけ」と判断する。季節が冬だと理解しているからですね。「2月に夏は来ない」と。ところが、季節が目に見えない相場では、暖かい日が数日続くと「夏が来るのか!」と、Tシャツを着る人が出てくる。株価は(何度も申し上げているように)意外に少数の市場参加者の動向で動くので、「あれ? Tシャツを着たほうがいいのかな?」とダウンジャケットを脱ぐ人が出てきた。

吹雪がきたら全員風邪を引く、と。じゃあ、いまは「夏気分」の人がTシャツになって、それを「どうしようかな」と様子見している人が現れている、そんな感じでしょうか。

居林:ためらい、それでも「このまま夏になったらどうしよう」と思うわけです。