市場の上下動の幅はどのくらいあるのかをまず見ていきます。日経平均は、2015年の1月から12月の1年間で上値と下値にどのくらい幅があったでしょうか。上下で22%なんです。ということは、2010年以降、ボラティリティー(価格変動)が一番小さい、そういう年だったんです。

 だいたい日経平均で30%ぐらい、個別銘柄にすると4割ぐらい、年間のボラティリティー、上下の変動があるわけです。ご自身の予想と比べていかがでしょうか。「案外大きいんだな」と思われませんか?

 新聞やネットの見出しを見ていると、いま、あたかも大波が襲っているように見える日本市場ですが、この程度の動きは実は「普通」とも言えるわけです。

日経平均、TOPIX100、トヨタ株の値動き
過去52週間の高値と安値の中央値からの振れ幅のトレンドをトラックした。日経平均では、2009年以降の平均は約30%となる。

 そもそも、なぜ大きく変動するのか。理由は、市場参加者の構成にあります。「市場参加者って、いったいどういう人達でしょう」とお聞きすると、皆さん「外国人投資家」や「公的基金」などとおっしゃるのですが、私の捉え方はちょっと違うんです。

 まず「“その日”売買をする人」。ある銘柄、たとえばトヨタとしましょうか。トヨタ株を売買する人って、少なくとも売り手側はトヨタの株主ですよね。ショートだったら買い戻しもありますけど、とりあえずここでは無視しておきましょう。

 トヨタの株主は前期末で49万6859人とのことです。まあ50万人ですね。そのうち、ある特定の“その日”に売買する人って一体全体何人でしょうか。直観でたぶん何千人、多くて何万人だと思います。50万人がいきなり50万人全部売買するわけがない。多い日でよくて5%。普段はおそらく1%以下です。実際に計算してみると、昨年に売買されているトヨタの株式数の平均は、全体の0.26%でした。株主数に乗じると、1250人ぐらいになります。

日経平均は1割以下が動かしていた
トヨタ株は全体の0.26%しか売買されていない
2015年の時価総額と売買代金から算出した

 1%以下の株主が決めた値段で株が売られ、それが“その日”の株価になるわけです。一方、残りの99%、株主なんですけれどその日は何もしない人は、他人の付けた値段で自分の損益が決まる「利害関係者」になります。

 そして、まったくトヨタと関係ない投資家。トヨタ株を持ってないけどその値動きを見ている人。私は「傍観者」と呼んでいますけれども、まあ観客ですね。市場参加者を、この3種類に分けて見ると、株式市場というゲームの参加者がよく見えてきます。

マクロな状況は、パニックを(必ずしも)説明しない

 このゲームは、先に申し上げたように、周期的な混乱が起こります。そこでパニックを起こす人が一定程度存在します。株価が上がる時も、下がる時もそうです。パニック時にまず動くのは、当たり前ですけれど実際の売買に関わっている人です。株主全体から見ると、多くて1割程度なんですが、この人たちの中のさらにいくらかが、パニックに陥って売ったり買ったりする。かなり少数の人の行動で株価は動くわけです。

 それだけならば値動きは小さいのですが、残りの9割の利害関係者にとっては、1割の人が決めた株価に、自分のP/Lが影響されるわけです。含み損が増えたり、逆に利益が増えたりすることで、大変だとなって次は彼らが反応を起こす。そうすると、場合によっては市場全体が引きずられて動き出す。こうした、少数が起こすパニックが、実は株式相場の上下動を作り出す原因なんです。

 株式投資を始めようという方たちは、世界経済の分析とか、ドル円相場の分析とか、サマーズさんが何を言ったかとか、そういうふうな所与の条件の分析から入って、それが株価を説明すると考えがちです。もちろん、分析自体はいいことなんですが、それ自体が株価の値動きを説明すると思うのは、株式市場のルールを勘違いしています。

 情報だけをいくら集めて分析しても、後付けの説明しかできません。第一、情報戦で勝負が付くなら、機関投資家に勝てるわけがありません。必要なのは、「パニックになった時に株主はどう動くか」を考えることです。そのための情報として、世界経済、業績や為替などの情報を集める、というならば正解です。

 パニックが株価を動かす。だから、「株価というのは行き過ぎるんだ」というのが私の持論です。繰り返しになりますが、株価を付けるのは株主のせいぜい1割。個別銘柄ならば1%以下。市場参加者の中の本当にわずかな人たちが株価に影響を及ぼすわけです。その中には、オーバーリアクションする人が絶対いる。そういった人が、高いにしても安いにしても、行き過ぎた株価を付けるわけですね。