北京市の交通渋滞、大気の汚染、家政婦さんの給料と帰省、そして海外旅行ブームと日本での爆買い。関係がないように見えますが、水面下で繋がっています。それは中国人の収入と消費の急増であり、所得の中流層の急速な拡大でした。

 1978年に改革開放政策を始めて以来、37年間で中国のGDP(国内総生産)は28倍にもなりました。年率で計算すると9.5%の成長が続いたことになります。

 この数字について中国で生活をしたことのない一部の日本の経済評論家は「嘘の数字」とよく言いますが、市民生活のレベルからみれば28倍どころか、それ以上の変化でした。

 中国政府の統計の数字には不正確さや意識的な操作が当然あるでしょうが、中国で生活すれば統計の大まかな数字が実態を反映していることは肌で分かります。

中国人は今、反省を始めている

 中国人は今、暮らし向きを良くするためにGDPや収入ばかりを追求した結果、渋滞と空気の悪化に代表される大きな犠牲を払っていることについて、反省を始めているところです。皆が利益を追求した結果、製品の成分の偽造や不正商品もなかなか取り締まれず、中国のイメージや中国人の健康が害されています。今年の年明け早々上海株が暴落しましたが、市場がこのままの経済成長を否定したことの証拠でもあります。

 中国の政治体制や外交政策に不満を感じている人たちが色眼鏡で中国経済を見る心情は分かるのですが、それが事実かどうかはまた別の問題です。私は、前向きに日中関係を考えている人たちに、中国の経済実態についてお話したいと思います。日中双方で経営と生活を体験した私自身、愛情を持って日中双方を真剣に考えてきたからです。

日経BP社は、宋文洲氏がソフトブレーンの経営者時代から始めたメールマガジン「論長論短」を書籍化した『日中のはざまに生きて思う』を刊行しました。生活の拠点を北京に移してから宋氏は中国経済を内側からつぶさに見て、その光と影を「論長論短」のエッセイで率直に語ってきました。本書は、日本と中国の両方で暮らし会社を経営した経験を持つ宋氏だからこそ語れる珠玉のエッセイを収めました。詳しくはこちらまで。