1978年に改革開放政策を始めて以来、中国のGDP(国内総生産)は37年間で28倍になった。中国政府の統計には不正確さや意識的な操作があるにしても、中国で生活すれば統計の大まかな数字が実態を反映していることは肌で分かる。最近の中国人旅行客の「爆買い」は、日中両国の緊張関係が和らいだために、それまで抑えつけられていた日本旅行への潜在的な需要が表面化して起こったものだ。

 北京暮らしのメリットの1つは家政婦さんを気軽に雇えることですが、我が家の経験から言えば、この5年間で家政婦さんの給料が3倍近くになりました。2009年は月に1500元で雇えましたが、14年になると月に3000元でも雇えなくなりました。

 一番象徴的なことは、家政婦さんも子供を連れて飛行機で帰省するようになったことです。彼女にとって飛行機は初体験のようでしたが、貧しい地域から来た家政婦さんが汽車ではなく、飛行機に乗って帰れるようになったのです。

日中の緊張関係が和らいだから「爆買い」が起こった

 最近の中国人訪日客の「爆買い」についても、私には感慨深いものがあります。北京の自宅の近所にたまに海外旅行に行く人がいましたが、2012年の夏休みが終わって久しぶりに会うと、いきなり「日本に行ってきましたよ」と言われました。

 当時、安倍首相の靖国神社への参拝や尖閣問題で日中関係が最も緊張していた時期です。それにもかかわらず日本に観光旅行に行ったということは、よほど日本に行きたかったのでしょう。

宋文洲(そう・ぶんしゅう)氏
1963年中国山東省生まれ。中国国費留学生として85年に北海道大学大学院に留学し、工学研究科の博士課程修了。89年に起きた天安門事件のため帰国せず、札幌の会社に就職したが、すぐに倒産。92年にソフトブレーンを創業し、独自開発の営業支援ソフトの販売やコンサルティング業務で会社を成長させた。2005年に東証1部に上場。42歳でソフトブレーンの経営から引退し、生活の拠点を北京に移す。

 実は中国の海外旅行ブームは2010年あたりから既に始まっていました。ゆっくりですが日中関係の緊張が和らぐにつれて、もともと日本にも行ってみたかった人たちがそれまでたまっていたストレスを発散するかのように、2014年から日本に行き始めた結果、日本で「爆買い」が起こったのです。