従来の枠を広げてみる

 今回の提案ではどのデザイン案でも、これまでのタブレット菓子とは全く異なる使用体験を提供すべくさまざまな工夫を凝らしました。中身の粒の数に応じてケースのサイズを変えられるモノや、シーソーのように片側を押すと取り出せるという新しい構造のもの、などなどです。

可変型パッケージ。筒状のパッケージをひねることでサイズを変化させられ、食べた数に応じてどんどんとパッケージを小さくできる。小さくすることで隙間をなくし、からからという音をなくす工夫でもある。縦型のパッケージは、陳列時にライバル商品と比較して目立つ
時間と味の関係をグラフィックに。丸みを帯びたケースで、ケースの端を押してタブレットを取り出す形のパッケージ。朝は爽やかなミント、夕方はデートの前に、15時はおやつ代わりとして、深夜には眠気を覚ますための刺激の強い味など、時間に応じた食用シーンを設定。ライバルがひしめくなか、限定した時間の局地戦を狙った案

 また、1つのケースで2つの味を楽しめたり、2つの味を合わせると清涼感がアップしたり味が変わったりといった仕掛けまでも含めてアイデアを出しました。味によってタブレットの粒そのものの模様や凸凹を変えるなど、食感にまで気を配ったデザインを展開しています。さらには店頭での見え方もCGを使ってシミュレーションをして、売り場でほかのブランドとの差異化をどう図るかというところまで提案しています。

2種類のフレーバーが1つのパッケージに分かれて入っており、オレンジとグリーンミントを一緒に食べるとグレープフルーツ風味に、別々のミントを一緒に食べると刺激が強めになるなど、フレーバーの変化を楽しめる提案
POPの使い方も含め、まるでハンドクリームのようなパッケージ。持ち運ぶときも、置いて使うときも、どこでも馴染むデザインに。やわらかいチューブなので、カラカラと音がしないのも特徴。店頭で陳列される様子をCGでシミュレーションした

 これらの中で、上のチューブ型のパッケージが高い評価を得ました。ロッテはこのパッケージをベースに、20代から30代の若い女性向けのキャンディを開発し、2014年末に北海道でテスト販売を実施。チューブから小粒キャンディが出てくるという新しい使用体験が好評を得て、現在全国販売に向けてさらに改良を行っているところです。

パッケージデザイン最終案。2014年11月、Bcan(ビーキャン)と言う商品名で、20代から30代をターゲットにしたキャンディとして発売。現在、全国展開に向けて改良を行っている(写真:山崎彩央)

 デザインと聞くと、多くの方が色や絵や形だけといった表層のものを想像するかもしれません。しかし私たちが提案するのは、「消費者がそのデザインを通じてどんなワクワクした体験をするか」というもの。デザインは従来の枠を広げて活用する必要があると感じています。

本連載で紹介したボツ案のより詳しい内容は、書籍『佐藤オオキのボツ本』に掲載しています。本邦初公開のボツ案を、数多くの写真と解説を交えて具体的に紹介。ボツ案を通じて、あたらしいアイデアや商品、新事業を生み出すためにどのようなプロセスを経ればいいのかがわかります。

日経BP社とnendoが共同で行うデザインコンサルティングサービス「bondo」。ブランディングや新商品開発、新事業開発をnendoの右脳と日経BP社の調査・情報力の両面から支援します。