新商品を開発したり新規事業を起こしたり、企業のブランディングを学ぶには、結果だけを見ても意味がありません。大切なのは、ボツ案を含むそのプロセスをきちんと知る事にあります。
 このコラムでは、年間400超のプロジェクトを抱える、デザインオフィスnendoの佐藤オオキ氏が、自らの「ボツ案」を通じて、成功する商品開発やブランディングプロジェクトのプロセス、アイデアの出し方について語ります。

 第3回のお題は「ミントタブレットのケース」。ワクワクする体験をデザインするためには、デザインは従来の枠を超えて考えることが大切になります。

 私がデザインした事例として、多くの方々の目に触れる機会の多い商品の1つが、ロッテのガム「ACUO」かもしれません。

 ACUOは、2006年の発売時からずっとパッケージデザインを担当しています。これまで貫いてきたコンセプトは「一歩下がる」というもの。店頭でセールスポイントを声高に叫ぶデザインが多いなか、あえて不要な要素をそぎ落とす。そのことが逆に商品を周囲から目立たせるきっかけとなり、さらに機能が直感的に伝わりやすいデザインになりました。その結果ACUOは、発売直後、同社のガム製品ではかつてなかったほどの週間売り上げを記録したということでした。

 ただし、国内のガム市場は、大きな市場変化の波を受けています。ガムの市場は年々落ち込み、代わりにミントタブレットと呼ばれる清涼菓子が市場で存在感を増すようになりました。特にアサヒフードアンドヘルスケアの「ミンティア」やクラシエフーズの「フリスク」に代表されるような商品。ガムは、噛むという行為を通じて集中力を高めたいときや眠気を解消したいときなどに食べられやすいのですが、手軽に清涼感を求めたい時や口臭を解消したい時などはタブレットの方が使い勝手が良いという人もいます。

 そうした中、ガム市場で圧倒的なシェアを誇るロッテも、ミントタブレットを無視できなくなってきました。この市場で、新しい起爆剤となる商品を開発できないか。一緒にアイデアを考えたいという依頼をいただきました。

食べる「体験」をデザインする

 こうした状況で私たちが提案したのが、ミントタブレットを持ち歩き、取り出して食べるという行為そのものを楽しめるような商品のデザインでした。デザインした当時に競合を調べたとき、パッケージングという観点では、どの企業もまだ新しい試みをそれほどやっていませんでした。そしてロッテの強みとして、味が途中で変化したり、2つの味を合成したりといった、味にかかわる高度な技術を持っているのを過去のプロジェクトを通じて知っていました。そこで、食べる体験や食べる楽しみというところをパッケージやミントタブレットそのもののデザインから訴求できないか考えたのです。