新商品を開発したり新規事業を起こしたり、企業のブランディングを学ぶには、結果だけを見ても意味がありません。大切なのは、ボツ案を含むそのプロセスをきちんと知る事にあります。
 このコラムでは、年間400超のプロジェクトを抱える、デザインオフィスnendoの佐藤オオキ氏が、自らの「ボツ案」を通じて、成功する商品開発やブランディングプロジェクトのプロセス、アイデアの出し方について語ります。

 第2回のお題は「工場産レタス」。高い価値を生む商品には、アイデアの広がりが欠かせません。売り方から食べ方まで、広範囲にわたる提案が必要になります。

 私たちがデザイン提案をおこなう場合、前回の「ゴミ箱」編のように複数の案を出すこともあれば、これぞという1案に絞ったデザイン提案をするケースもあります。そのときは、1案をいろんな角度から見せてアイデアの広がりを伝えるようなプレゼンを行うよう心がけています。

 一点突破型のデザイン提案ですが、そのなかでも、印象に残っている案を紹介します。それはレタスのデザインです。

 いま、さまざまな企業が、工場の「クリーンルーム」で野菜を生産するという試みを行っています。LEDの光源を使うのが特徴で、その野菜の特長は「無農薬で、洗わずにそのまま食べられること」です。ほぼ無菌状態で育つわけですから、常温での長期間の保存も可能。ただし、価格は通常の約1・5倍とやや高額になってしまうということでした。そんななかで育ったレタスのパッケージをデザインして、ひいては新しい売り方を提案してほしいという依頼を、あるクライアントから受けました。

パッケージデザインからライフスタイルを提案

 「洗わずに食べられる」という特徴だけで、通常の約1・5倍の値段を付けるのはおそらく厳しいでしょう。ですから、デザインを活用してさらなる価値を提供する必要があります。そこで、まずは食べ方という面からのアプローチを考えてみました。例えば、レタスを野球ボールくらいのサイズに縮小することで、結果的に味や栄養価を1.5倍に凝縮させた商品設計はどうでしょうか。

 そう考えてイメージしたのが、りんごをかじりながら歩くような海外の習慣でした。それをレタスに当てはめてみればいいのではないでしょうか。「朝、コンビニや駅などで購入して、小腹がすいたらそのままかじる」という、今までにないライフスタイルを提案できそうです。また、丸かじりのイメージを強調することで、レタスを洗わずに食べられることも同時にアピールできます。

クリーンルーム栽培のレタスとして、小さく栄養を凝縮させたものを提案し、パッケージをデザイン。レタスは触感に応じて2種類を用意した
容器底には、かじった様子をイメージした切欠きが。切欠きを底面にすることでななめに陳列でき、店頭でのアピールがしやすくなる