ゴミ箱なのにゴミを受け付けない

 このようにゴミ箱に求められる要素を抽出したのち、各要素を解決できるデザインを考えます。外観のみならず中身の機構まで考え、CGによるデザイン検討だけではなく、段ボールでワーキングモックを作って動作確認をし、最終的に3Dプリンターなどで細部まで作り込んだデザイン案を作りました。ゴミ箱自体が盗まれないようにするにはどうすればいいか、また大量にゴミ箱をストックしても保管しやすいデザインとはどのようなものかを突き詰めたもの。ほかには、プランターになっていると周囲の景観を改善できるのではないかという案もありました。

 メーカーのお題にストレートに答えたものも当然あります。絶対にペットボトルのキャップをはずさないと捨てられない仕掛けを作ってみたり、下にタンクを作って、液体とボトルを同じ穴に捨てつつも分別できるようにしようというものもデザインしました。

絶対キャップを開けさせるゴミ箱。ポイントはつっかえ棒で、絶妙な長さの棒が入り口真ん中にある。ここにペットボトルの口を入れないと捨てられない仕組み
液体とボトルが区別できるゴミ箱。ルートセールス担当者が抱える一番の悩みである、ボトルと液体とが混ざる問題を解決した案。液体は別タンクに

 そのなかでも特に異色のアイデアで評価が高かったのが、下のデザインです。これは、ボトルに水が少しでも入っていると、バネを仕込んだ入り口のゴミ受けが開いてしまい、まるでシシオドシのように「ペッ」と吐き出すようにボトルを外に出してしまうというものです。これは実際に実物大のモックアップを作り、バネの強さや動きまで検証したのですが、残念ながら現時点ではどのデザインも実用化はされていません。

異色のゴミ箱。入り口のゴミ受けにバネの仕込まれた板があり、ボトルに少しでも液が入って重量があると、ペットボトルが吐き出されるように落ちる。動きの検証のため、実物大のモックまで作った (写真:吉田明広)

 これから東京オリンピックに向けて、異なる文化的背景を持つ人々がたくさん日本を訪れるでしょう。そうしたなかで私たちの街をいかに美しく保つか。そんな観点からも、こうした新しいゴミ箱の提案はとても重要なのではないかと思っています。新しいゴミ箱の可能性はまだまだありそうだなと、そんな予感を感じさせてくれるプロジェクトでした。

 本連載では数回にわたってこうしたボツ案を紹介しながら、アイデアがどのように生まれるのか、さらにはボツ案を活用しながら企業の課題解決を行うプロセスについてお話ししていきたいと思います。

本連載で紹介したボツ案のより詳しい内容は、書籍『佐藤オオキのボツ本』に掲載しています。本邦初公開のボツ案を、数多くの写真と解説を交えて具体的に紹介。ボツ案を通じて、あたらしいアイデアや商品、新事業を生み出すためにどのようなプロセスを経ればいいのかがわかります。

日経BP社とnendoが共同で行うデザインコンサルティングサービス「bondo」。ブランディングや新商品開発、新事業開発をnendoの右脳と日経BP社の調査・情報力の両面から支援します。