新商品を開発したり新規事業を起こしたり、企業のブランディングを学ぶには、結果だけを見ても意味がありません。大切なのは、ボツ案を含むそのプロセスをきちんと知る事にあります。
 このコラムでは、年間400超のプロジェクトを抱える、デザインオフィスnendoの佐藤オオキ氏が、自らの「ボツ案」を通じて、成功する商品開発やブランディングプロジェクトのプロセス、アイデアの出し方について語ります。

 一見華麗に見えるかもしれないデザイナーのプロジェクト。しかしその陰には、死屍累々のボツ案が横たわっています。

 私たちnendoというデザインオフィスでは、現在400を超えるプロジェクトを同時に進行しています。そのプロジェクトの内容はさまざまです。新商品開発や定番商品のリニューアル、デザインを通じて未来の事業モデルを生み出すお手伝いや、企業のコミュニケーション戦略の立案など。特に最近は「なんとかしないといけないが、なにをしていいのかわからない」という企業の漠然とした課題を、企業の皆さんと一緒になって考えるという依頼が増えています。

 こうした依頼に対して私は、できるだけ多角的な視点から、具体的なデザインを伴った提案を行います。そして早い段階で細部まで作り込んだデザイン案を複数投げかける。これは具体的にイメージできるものが数多くあった方が、クライアントとの議論を活性化でき、最終的な成果物の精度が飛躍的に高まると信じているからです。これは、IT業界でいう「アジャイル型開発」だったり、顧客視点で革新を生み出すデザインシンキングにおける「ラピッドプロトタイピング」と呼ばれる手法に似ています。

 では、こうした仕事のやり方と私の仕事が同じかというと、少し違うかもしれません。私たちの得意な点は、その提案内容の密度です。対象物の形状や色、素材といった要素だけでなく、新たな機構や構造、使い勝手、さらにはパッケージ、ロゴ、インターフェース、店頭イメージや広告戦略、オプションパーツやその後の展開例まで提案することも多々あります。提案の密度が高ければ高いほど、ユーザー視点で皆がデザインを捉えられ、議論がさらに活発になるからです。