共和党およびNRAをはじめとする銃保有の賛成派が強かったのです。彼らにとってオバマ氏は皮肉にも「おいしい」存在でした。銃規制を全く進められなかっただけでなく、売り上げ面でも銃産業に貢献したからです。民主党は銃を規制しようという党ですから、オバマ氏が当選すると、銃産業では直後に特需が発生しました。「銃が買えなくなるかも」と考える人たちが銃器店に押し寄せたのです。株式相場が低迷していた時期だったにもかかわらず、銃関連銘柄の株は落ち込みませんでした。

 日本は、米国の銃問題について、常に銃規制派の視点に立って見ています。ただ、日本人には理解しがたいでしょうが、銃保有も銃規制もどちらも正義なのです。前者の拠り所は合衆国憲法の修正第2条です。こちらが原文と日本語訳です。

 「A well regulated Militia, being necessary to the security of a free State, the right of the people to keep and bear Arms, shall not be infringed(規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有し、また携帯する権利は、これを犯してはならない)」

 「人民」とはどこまでを含むのか、「武器」とは何を指すのか、どのような場所まで携帯が許されるのか。曖昧で解釈の余地があるゆえに、修正第2条は「殺しのライセンス」となっています。例えば、現状は、自宅でなら弾を装填した銃を携帯してよいことになっています。自宅以外はどうなのかがあいまいです。今後トランプ政権下で細部を詰めていく作業が始まるでしょう。

年間3万人が銃のために死亡

トランプ政権では銃問題はどのように進んでいくでしょうか。

鵜浦:トランプ大統領は軍備増強を唱えています。これは銃産業にとって追い風です。彼自身もNRAとの距離は近いでしょう。長男のトランプジュニア氏は狩猟マニアとして知られており、最近マスメディアに猟銃を試射する姿を撮らせていました。

 米国では年間に約3万人が銃の犠牲者になっています。当然世界一の数です。2位のドイツが800人ほどですから、いかに米国の被害者が多いか分かるでしょう。3万人のうち約1万2000人は自殺、残り1万8000人が他殺です。

 前者は白人が多く、後者は黒人やヒスパニックが大半です。だから、私が調査で会った白人の中には、銃犯罪を他人事と捉えている人が少なくありませんでした。「ミスターウノウラ、我々は大丈夫だよ」と。この問題に関して人種間で捉え方が違うのです。

銃規制派で力を持つ個人や団体は今後現れないでしょうか。

鵜浦:元ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏が「Every town for Gun Safety」という銃規制の運動を起こしています。しかし、NRAに対抗できるほどの勢力ではありません。個人的にはこれからのオバマ氏に期待したいですね。

 彼はシカゴで貧困層を救済する社会活動で弁護士として活躍し、政治家になりました。シカゴは近年、治安の悪さから「シラク」と呼ばれています。「戦争中のイラク並みに危険」という意味で生まれた俗称です。

 もしオバマ氏がいつか地元のシカゴに戻るなら、銃規制問題に再び取り組むのではないでしょうか。大統領在任後期には白人警官が黒人男性を射殺する事件が相次ぎました。彼は初の黒人大統領であったにもかかわらず、マイノリティーの地位向上でも大きな功績は残せなかった。忸怩たる思いでいると、私は見ているのですが……。