中国と正面で対峙するのは日本

トランプ大統領は安全保障面で中国に対してはどのような姿勢を採るでしょう。

孫崎:オフショアのバランサーとしての立場を取るとみています。中国と真正面で対峙するのは日本。日本を守るのはあくまでも自衛隊です。米軍ではない。そして、日本が不利な状況に陥り、バランスが崩れた時にのみ米軍が支援する。2015年4月に改訂されたガイドラインを読めば、この点は明らかです。

 米軍の力は弱まっています。中国がAA/AD戦略を進めている。ランド研究所の研究によると、台湾を巡る通常兵力戦では中国の方が有利となっています。台湾に最も近い米空軍の基地は沖縄の嘉手納です。ここは、中国が配備する弾道ミサイルによってすぐに使用不能となってしまうでしょう。中国は日本にある米軍基地を射程に収める弾道ミサイルを数千発配備していると言われています。通常兵力戦で不利だからと言って、安易に核兵器を使用するわけにはいきません。

*:「AA/AD」はAnti Access /Area Denialの略で、「接近阻止・領域拒否」と訳す。中国大陸から約1500マイルまでの海域における米軍による自由な作戦展開を阻害し、遠ざけるための作戦構想。弾道ミサイルや巡航ミサイル、潜水艦が主な手段となる

 他方、南シナ海の状況について、ランド研究所は五分五分と分析しています。しかし、台湾方面でさえ厳しい状況にある時に、南シナ海にどれだけ国益を感じるかは疑問です。「航行の自由作戦」など嫌がらせ程度のことはやるでしょうが。

*:公海における航行の自由を侵そうとする場合、その海域に軍艦や軍用機を派遣し、公海であることを示す作戦

憂鬱な8年にはならない

経済では貿易戦争。安全保障では、IS掃討戦のロジスティックス支援を求められる。日本にとって厳しい状況ですね。そのような状況がこれから8年続くかと思うと気が重くなります。

孫崎:実は私はそうは思っていません。

え、そうなんですか。

孫崎:はい。トランプ政権は長くは持たないと考えているからです。この政権は1%の富裕層のための政権です。99%の米国民はだまされないでしょう。就任式の前後から抗議デモが起こっているのはその証です。これまで聞いたことがない事態です。メディアもハネムーン期間の終了を待つことなく批判姿勢を強めています。こうした動きは侮れるものではありません。

*:新大統領が就任してから100日間、メディアは批判を避けるのが米国の慣例となっている。