1月20日、トランプ米新政権が発足した。トランプ氏にばかり目が向けられるが、この日はオバマ政権が終了する日でもあった。オバマ政権は、米国の歴史においてどのような意味を持つのか。オバマ大統領は何を成し遂げようとし、何を実現したのか。そして、何を成すことができなかったのか。オバマ政権を総括することで、トランプ政権を評価するものさしも見えてくる。

 外交官として、防衛大学校の教授として、米国の動向をウォッチしてきた孫崎享氏に聞いた。

(聞き手は森 永輔)

プラハでの「核なき世界」演説に臨むオバマ大統領(左)もミシェル夫人(写真:ロイター/アフロ)

オバマ氏の施政8年間を採点すると何点でしょう。

孫崎:私の点は辛いですよ。49点といったところです。

孫崎享(まごさき・うける)
1943年生まれ。1966年東京大学を中退し外務省に入省。駐ウズベキスタン、国際情報局長、イラン大使を歴任。その後、防衛大学校教授を務める。著書に『日米同盟の正体』『情報と外交』など

え、50点に満たないとは相当低いですね。

孫崎:オバマ氏が掲げた理想は素晴らしかった。しかし、実現したものは多くありません。中には、実現する術があったにもかかわらず、それを実行しなかったものもあります。

それは何ですか。

孫崎:3つ、挙げられます。1つは「核なき世界」に向けて一歩を進めることができたのに、しなかった。

アサド政権の打倒を最優先した過ち

日本を含む米国の同盟国は、米国の核の傘の下で安全を保っている面があります。さらに、核軍縮交渉はロシアや中国など、相手があってのこと。米国が一方的に核軍縮を進めるわけにはいかないのでは。

孫崎:それは、そうです。しかし「核を保有しない国に対して核攻撃はしない」と宣言することはできたでしょう。ノーベル平和賞まで受賞したのですから。

 2つ目は中東からの撤兵です。イラクからの撤兵を実現しましたが、まだ5000人近い兵士が残っています。公約した通り、徹底的な撤兵をするべきでした。