今回は前回に引き続き、ベテランの人事コンサルタント・森 大哉さんに取材を試みた内容を紹介します。森さんはコンサルタントとして20数年のキャリアを持ち、数百を超える企業の人事制度設計や組織改革などに関わってきた方です。現在は、コンサルティング会社・トランストラクチャの代表取締役をしています。
人事コンサルタント・森 大哉さん

 前回と今回の記事は、私が会社員をしていた頃、ある上司に仕えたときのことをモチーフにしています。この上司が、部下である課長や私を必要以上に抑えつけようとするのです。その頃、私は部長のマネジメント力やメンタリティーに愕然として、バカバカしくて仕方のない日々を送りました。詳細は、前回の記事(「集団で課長を無視する、カルトな職場」)をご覧ください。

 今回は、森さんに、なぜ、そのような上司が淘汰されないのかをテーマに話をうかがっています。まず、森さんの経営する会社の管理職やご自身に、優秀な部下を抑えつけようとした経験があるかどうか、をお聞きしました。そこから話を広げ、管理職のあり方について話をうかがってみました。

ご自身が経営するコンサルティング会社では、管理職が優秀な部下を抑えつけて、台頭できないようにすることはないでしょうか?

:当社では、そのようなことはまったくありません。それには、いくつかの理由があるかと思います。1つは社員数が50人前後ですから、役員である私たちやほかの管理職をはじめとした社員の目が行き届いているのです。もう1つは、人事コンサルティング会社ですので、特に社員の採用や人事評価、育成などには日ごろから様々な注意を払っています。

 コンサルティングの現場では、クライアントの評価者を集めて部下の評価の中身を皆で検証し合う「評価会議」というものを実施することがあります。当社では、それと同様のことを行っています。

 この評価会議では、マネージャ―たちが会議室に集まり、部下たちにつけた評価とその理由についてひとりずつ説明をします。たとえば、「〇〇さんをC評価にしました。~にやや問題がありました」と発言します。それを聞いていたほかのマネージャ―が、「それは厳し過ぎはしないですか?基準に照らせば、B評価が妥当です。~という理由だから、Bでいいと思います」などとコメントします。

 こういうやりとりをコンサルタントがファシリテーターとなって活性化し、議論をより深いものにしていきます。当社であれば、役員がします。時には、「それは違うのではありませんか」「根拠は薄弱ではありませんか」などと投げかけます。このような場を設けると、考課者であるマネージャ―はいい加減な評価ができなくなります。事実にもとづかないことや、あまりにも主観の強い評価をすることが難しくなっていくのです。ふだんから、部下たちや部署のことを正確に把握しようとするはずなのです。

 私は、日本企業の人事評価の1つの問題点は、1次考課者の評価の仕方にあると考えています。1次考課者は、評価を受ける社員のすぐそばにいる人です。通常は、2次考課者である管理職よりは正しい判断ができるはずなのです。それができていないとすると、やはり、問題なのです。