私大医学部の強い母校愛のワケ
不適切の内容はというと、医師が足りない地域の出身者を優遇した神戸大や北陸3県出身者を優遇した金沢医大などはなんとなく同情を禁じ得ません。しかし、多くは「同窓生の子女を優遇する」か、「2浪以上と女性が入りにくくする」ものでした。多くの私大医学部には不思議なほど強い母校愛と帰属意識があるとよく感じておりましたが、なるほど卒業生子女を優遇すればそれも強まるというものですね。
ここで20年前に医学部受験をした私のお話をいたしましょう。
私は受験勉強というものがどうしてもあわず苦戦しました。おまけに家の経済状況から、費用が国公立の10倍かかる「私立大学医学部には行けない」状況でしたから、やむなく浪人して出身地ではない地方大学を受験し続けておりました。結果、2浪でやっとこさ鹿児島大学に受かり、かの南国の地で医学部の6年間を過ごしたのです。
考えてみれば私だって「2浪かつ地元出身ではない」という理由で、面接試験の点数などは若干低めにつけられた可能性だってあったわけです。そう考えると医者になれなかったことだってあったわけで、いや恐ろしいと思います。あの時の小論文試験「自由と権利について書きなさい」がよく書けたのが良かったのでしょうか。
地元出身者を優先して採用する「地域枠」
とはいえ鹿児島大学の教授たちからは、「地元じゃないアイツを採ったって結局鹿児島の医療に貢献していないじゃないか」と思われてもおかしくありません。私は大学を出た後、東京の都立病院、福島の私立病院でしか働いていないのです。正直なところ、鹿児島大学の先生方には申し訳ない気持ちがあります。
医学部は他の学部と異なり、非常に職業訓練の側面が大きいところ。なにせ学生のうちから「先生」と呼ばれるくらいです。そしてその訓練は地域に根ざしており、私が医学生のころは大学病院のみならず、県内の病院10カ所くらいには実習をしにいかせていただいたのを覚えています。ですから、せっかく教育して仕上げた医者が全く別の地域に行ってしまうのは、なんとも非効率のようにも思えます。その考えから最近できたのが、医学部入試の「地域枠」というものです。私大・国公立大を問わずこの枠は設置されており、多い県ではたとえば旭川医大の112人定員中50人が地域枠として北海道内や道北・道東限定で募集されるなどしているのです。
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