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若手医師が「無給医」を容認する理由

 様々な理由とは、このようなものが考えられます。

  1. 慣習・人手不足
  2. アカデミック・ハラスメントやパワーハラスメント
  3. そもそも条件交渉の文化が皆無
1. 慣習・人手不足
 恐ろしいことに、「昔からそうだったから」という理由で無給医というシステムが続いていることがあります。大学病院では多くの仕事があるそうですから、それらをやるためには医師歴が4~10年目くらいの医師ってちょうどいいのですよね。何でもだいたい一人でできる年代ですし、もっと上になるとフットワークが重くなりますから。実にちょうどいい。
 人手不足のところに、「院生を割り当てる」ことで診療を維持させている医局は実に多いのです。まあこれは何も強制労働ではなく、院生側の希望のこともあるでしょう。院生は医者です。若い医者は普通、「臨床現場から4年間まるごと離れると技術や知識が落ちるのが心配」と考えます。その気持を受け止めてくれるのが、院生の間の1~2年を働くパターンです。これは、フルタイムで給与が付いて働く人もいれば、週に3日だけで時給1000円という人もいるようです。
 時給1000円でも、大学卒で専門職を働かせるにはなかなかの低額です。アルバイト医師の時給の相場はだいたい5000~1万円です。さらに問題なのは、もっと安い給与の場合もあり、時給は最低賃金を下回っているケースもありました。
2. アカデミック・ハラスメントやパワーハラスメント
 そういう状況であっても、医師は黙々と働きます。なぜなら、医師の世界は非常に強い縦社会。一つでも上の学年の医師には絶対に逆らえません。これは医局に入っていなくてもまあまあ感じますし、医局ではかなり強固でしょう。
 さらには、院生のボスである教授は、医学博士の学位を院生に取らせるかどうかという立場にあります。気に入ったかどうかで学位授与を決める浅ましい教授はいないでしょうが、院生の研究に協力したり、研究がうまくいくような状況を提供したりする可能性はあります。このような学位授与と労働・雇用の権力が医局の上層部に集中するため、間違っても院生は文句が言えないでしょう。ここには、パワーハラスメントやアカデミック・ハラスメントの成分が含まれています。
 文句を言うとしたら、それは医局を辞めるということになるでしょう。
3. そもそも条件交渉の文化が皆無
 そして、そもそも医師には条件を交渉するというスキルがある人はとても少ないのです。初めての就職はマッチングというシステムで厚生労働省が決めますし、医局に入れば後はどの病院に勤めても労働条件は医局との間で決まっており、医師個人がすることは稀です。ですから、もともと悪い条件を言われてもYesと言うしか選択肢がないのです。
 これらの理由が複合的に合わさって、無給医というシステムは何十年も存続してきました。そして今回NHKが取り上げなかったら、私も取り上げる勇気がなかったでしょうから、「医者なら誰でも知ってるけど、誰も言わない」状態が続いたことでしょう。