韓国の病院は「Like a factory」

 ここで少し話は変わります。もう結構昔になりますが、私は韓国のソウルの病院2カ所へ視察に行ったことがありました。ASAN Medical Centerとサムスングループが運営しているSamsung Medical Centerという病院で、どちらも1週間の滞在をさせてもらいました。韓国は、両病院のような2000床を超える超巨大病院がソウルに5カ所あり、それ以外は中規模な病院が各地に点在しているという一極集中型になっています。日本の大きな病院でもだいたい700~1000床ですから、いかに大きいかが分かりますね。

 そして私が両病院で出会った患者さんはみな、韓国の国内各地から電車で3時間も4時間もかけて病院に来ていました。手術を受けるために家族はソウルまで一緒に来ていて、治療旅行なのだと言っていました。それほど大きくない国土とはいえ、これでは大変ですね。

 そういった患者さんを見ていて、私は思ったものです。確かに効率は素晴らしいし、患者さんを集約して多い症例数を持っているため手術レベルもかなり高い。研究の点でも、手術数が多ければ質の高い研究ができるだろう。しかし、患者さんの立場に立ったらどうだろう。一家で旅行してきて、滞在費用は高くつくのではないか(患者さんが泊まるホテルを併設している病院もありました)。手術はいいけれど、術後はどうするのだろう。通院なんかできないから、家に帰った後に何か合併症が起きたらどうするんだろう。きっと地方の、その患者さんのオペ内容をそれほど知らない外科医がみるのだろう。それはどうなのだろうか。

 韓国の若い医師とも話しました。「Like a factory」と彼らは口々に言います。効率ばかりを追い求めて、まるで工場のようだと。フリーアクセスを獲得した日本の厚生労働行政は素晴らしいのだな、と強く感じ、医療の公共性を実感したものでした。

 以上、3つの理由で「医療はサービスではない」と私は考えます。

 しかしその一方で、緩やかな競争が起きているのが日本の医療の現実でもあります。流行るクリニックと潰れるクリニックがありますし、病院だってどんどん規模を拡大するグループ病院がありますよね。この勝ち負けはなぜ起きるのか。それを分析すると、実はサービス業の部分なのではないかとも思います。

病院が提供するのは医療だけ?

 病院が提供するものは、医療だけなのか。医療には、患者さんの快適さや便利さが含まれていないのか。人を相手にする仕事である以上、私は医療にはサービス業としての視点は必須だと思います。もちろん本質は医療ですから、その向上は常に追求しつつ、ではあるのですが。医療の質とサービスの質を同時に高めていくような努力がこれからの病院には求められるでしょうし、サービスの部分をやりきることは他の病院との差異化につながるでしょう。

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