こんにちは、総合南東北病院外科医長の中山祐次郎です。京都大学大学院でただいま勉強中です。

 気温38度超えが普通になっていた京都も最近涼しくなってきたな、と思っていたら、先日またしても台風に見舞われました。台風21号、「25年ぶりの強い台風」という肩書を携えての襲来でした。残念なことに関西圏で数人の方がお亡くなりになったとのこと。

 私の住む左京区でも、とんでもない風雨が吹き荒れました。それはもう風が強くてですね、築78年のオンボロ我が家が飛んでしまい、「オズの魔法使い」状態になってしまうのではないかと思ったほどでした。しかし戦前から建っている家だけあって、特にダメージもなく過ごせました。周りでは、同じく京都在住の知人の家が停電になってしまったそうです。去年は私、福島県におりましたので、昨夏は台風なんて日本に来たかな?などと思ってしまうわけですが、つくづく人間というものは対岸の火事は気にしないのだなと実感してしまいました。

 さて、少し前の本コラムの記事で、「病院待ち時間長すぎ問題」について触れました。この中で私は、待ち時間が長い理由として、

・検査結果が出るのに時間がかかる
・待ち時間を減らす努力を病院がしていない

を挙げました。ありがたいことに61件ものコメントを頂戴し、深い学びとさせていただきました。同時に読者の皆様が実情に対して大変に憤慨なさり、困惑していらっしゃることがよく分かりました。

 今回は、この問題をさらに深く考えるために「医療はサービス業か?」というテーマで議論したいと思います。

患者さんは「医療の質」を評価しづらい

 発端には、知人の外科医の記事で同テーマを取り上げていたこともあります。

 なお、総務省の日本標準産業分類(平成25年10月改定、平成26年4月1日施行)によると、

 「医療業とは、医師又は歯科医師等が患者に対して医業又は医業類似行為を行う事業所及びこれに直接関連するサービスを提供する事業所をいう」

とあります。本稿でのサービス業とは、広い意味でのサービス業ではなく、接客業などの、個人や企業が求めるサービスを提供することで対価を得て利益を上げる仕事だとします。

 知人外科医の記事では、

「医療には、一般的なサービス業と大きく異なる点があります。『サービスの受益者が、そのサービスの質を正確に評価できないこと』です」

とありました。なるほどこの指摘はもっともで、患者さんは受けた医療の質をあまり評価できません。それは、医学という学問が特殊であることに加え、例えば、一度虫垂炎にかかり手術したら、二度と病院にかかれなくなるという性質によります。レストランとは違い、何度も繰り返し食事を食べて比較する、ということが基本的にはできないのです。もちろん「とっても順調に治った」とか「スタッフがみんな丁寧で感じが良かったから、とても快適だった」などということは分かりますが、その病院の医療レベルが本当に高いかどうかは分かりません。

 先ほどの虫垂炎の例えで言うと、本当なら手術をしないでも治った腹痛だった可能性、そもそも虫垂炎ではなかった可能性があるからです。本当に虫垂炎だったかどうかは、切除した虫垂の病理所見がphlegmonousやgangrenousなどきちんと炎症があったかどうかによります。ここまで分かる人はいないでしょう。

 これは重要な視点です。

 もう少し考えると、「医療はサービス業か」という問いには、以下の3つの理由からNoと答えたいと思います。

1. 情報の非対称性があるから
2. 医療に市場原理は合わないから
3. 医療は公共性が高いから

 順に解説します。