こんにちは、総合南東北病院外科の中山祐次郎です。京都大学大学院でただいま勉強中です。先日は大阪で震度6弱の大地震があり、京都の私の住む左京区でも震度4でした。築80年近い私の家はよく揺れましたが、幸い物が落ちたり怪我したりはありませんでした。もっとも揺れた大阪府高槻市に住む救急医の友人は、物が落ちて壊れたり、家のガスが不通になったりしたそうです。大阪の国立循環器病研究センターでは一時停電し、人工呼吸器や人工心臓などを装着している患者さんが大阪大学医学部附属病院などに搬送されたそうです。搬送も非常に危険なので、DMAT(災害派遣医療チーム)が出動し搬送に当たったようです。

 さて、この連載は前々々々々回から、特別編「医者の本音」シリーズとして全8回で毎週お送りしております。

 今回は、病院について、中にいる人間の視点で書いてみたいと思います。病院に悪いイメージを持っている人もいるかもしれませんが、知るだけで接し方も変わってくるかもしれません。その効果のためにも、これまで同様、本音でお伝えします。

 数年前、私は父の付き添いで日赤系の大きな病院に行きました(大したことのない疾患です)。

 受付から医師の診察に呼ばれるまで、実に1時間。診察を受け、2つの検査をこなして会計に行くと、なんと病院に着いてから3時間が経過していました。

 あまりに待ち疲れた私は、「これはひどいね」と父に言いました。すると父から一言。

 「病院なんてこんなもんだよ。待つのが仕事みたいなもんだ、患者は」

なぜこれほど待つのか?

 私は医者ですから毎日病院にいるのが当然ですが、これには衝撃を受けました。待つのが仕事……こんなひどい現状、なんとかならないものでしょうか。私はその日から、「病院の待ち時間が長すぎる問題」を考えていました。

 病院に行ったことがある人は必ずといっていいほど、病院はなぜこんなに待たされるのか? と疑問に感じることでしょう。

 なぜ、これほど待ち時間が長いのか。その理由を、2点挙げます。

  • 検査結果が出るのに時間がかかる
  • 待ち時間を減らす努力を病院がしていない

 患者さんが病院を受診すると、まず事務が受付をします。初診であればカルテが作成され、問診票が渡されます。その後は、「医師の空きを待つ時間」です。

 初診のカルテを作るのにも、かなりの時間がかかります。カルテとは、患者さんの情報が詰められたファイルのこと。その中には、名前、年齢、性別に始まり、身長・体重や過去の病気・アレルギー、緊急連絡先、家族構成、保険証など情報が多岐にわたるのです。病院に着いてから、準備ができて「医者のもとで診察できますよ」という状態まで、早くても30分はかかるでしょう。

 初診でない場合、採血検査やレントゲン検査などをして待つこともありますね。

 私の外来は大腸がんの患者さんが多く、その方々はほぼ毎回、採血検査があります。窓口で受付をし、採血をして、その結果が出てから医者(私)の診察になるのです。採血の結果が出るのにおよそ40~50分はかかります。なお、大きい病院で、腫瘍マーカー(がんの数値)など時間のかかる検査項目があると、2時間以上かかることもあります。

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