「名医本」は信頼できるか?

 では、名医本に載っている名医はみなコミュニケーション力があるのか、というと、そうではありません。そもそも、この問い自体に私は違和感を覚えます。私は「名医」という言葉が好きではありません。

 少し話がそれますが、名医とは、どんな医者なのでしょうか。

 想像するに「他の医者には治せない病気を治す医者」といった意味でしょうか。それはどうやって測定するのでしょう。手術の成功率で測れるのかもしれませんが、患者さんの病状が違う以上、同率に比較することは無意味です。がんセンターでのがん患者さんの生存成績が良いのは、がん以外に糖尿病や心臓病などの病気を持っている患者さんの治療を断っているからです。病状が違うのに、比較はできません。

 ちまたに出回る「名医本」もどうでしょうか。

 なぜか私は掲載オファーをもらったことがありますが、正直信頼はあまりできません。名医本に常連として載っている医師であっても、手術が下手な医師もたくさん知っています。ここでは、「名医」という言葉ではなく、医師としての総合的な能力が高い人を「良い医者」と表現したいと思います。

私が考える「良い医者」の条件

 私が考える「良い医者」とは、医師としての技術や知識がある上で、さらにコミュニケーション能力も高い医者です。はっきり言って、コミュニケーション能力が低い医者は「良い医者」とは言えません。それはなにも私の好みではなく、これから医療界に改革をもたらすAI (Artificial Intelligence;人工知能)に、人間の医者が勝つための必須スキルだからです。AIは遠くない将来、内科医のように患者さんの診断をし、外科医のように手術をするようになります。そのとき、人間の医者がAIより優れた能力を発揮できるのが「共感力」です。AIは正確な説明ができても、患者さんと一緒に落ち込み、悩みを共有した視点で治療を選択することはできません。

 SHAREのようなコミュニケーションスキルを身につけ、目の前の患者さんの精神世界と深く関わる。それが、これからの医者に求められる姿勢でしょう。もちろん、今でもそれをやっている医師は大勢います。