コミュニケーション力は学べる

 ここまで医者が冷たい態度を取る理由について書きました。では、優しい(ように見える)医者、言い換えればコミュニケーションが上手な医者こそが、名医なのだろうか? という疑問が浮かびます。

 あまり知られていませんが、コミュニケーション力はある程度学んで身に付けることができます。コミュニケーションとは才能ではなく、技術も重要であるという側面があるからです。これまで触れてきませんでしたが、医者はあまりコミュニケーションを学んでいません。これほど業務でコミュニケーション能力が求められるのに、です。

 しかし、最近は、がん診療に携わる医師が、患者さんとのコミュニケーション方法を学ぶ場面が増えてきました。例えば、「悪いニュースの伝え方」です。医療現場における、難しいコミュニケーションの一つとして知られる「悪いニュースの伝え方」については、SHAREと呼ばれる技術が少しずつ知られてきました。

「悪いニュースの伝え方」にはコツがある

 SHAREの表を見てください。上段「支持的な環境」の項に「プライバシーが保たれた、落ち着いた環境を設定する」とあります。

 よく考えれば、看護師が冗談を言い合っているような騒がしいナースステーションの隅で、「あなたはがんです」と言われたら……「なんて配慮がないんだろう」と思いますよね。同じ告知でも、静かで落ち着いた個室で言われた場合とは、受ける印象はずいぶん違うでしょう。どれほど医者が思いやりを持って話しても、「ふざけるな」と思われることでしょう。

 また、説明の途中に「ここまでで、質問はありませんか?」と促してくれる医者と、問いかけなしで最後まで一気にまくし立てる医者も、印象が違いますよね。良い医者はコミュニケーションも上手だと私は思います。