経営よりも医療判断を優先

 次の図は、主に医院やクリニックの医師を対象としたアンケート調査の結果です。

 これは、「7種類以上の内服薬投与が必要と思われる患者に対し、薬剤料の逓減や処方料・処方せん料の減額を回避するために何らかの対応をしたかどうか」という質問に対して、1526の医療機関が回答した結果です。1051の医療機関(68.9%)が「していない」と答え、407の医療機関(29.2%)が「したことがある」と回答しています。これが意味するのは、7割の医者は「病院経営にはマイナスだが、患者さんにとって必要なので多種類の薬を処方した」ということです。

 では、どうしても必要な薬だけを処方しているのに、種類が多くなってしまう患者さんに、「薬を減らしたい」と言われたら医者はどうするでしょうか。医者はおそらく非常に悩むと思うのです。本当に必要なら、病院経営にマイナスでもその患者さんのためには処方したい。しかし、患者さんは薬が多すぎてつらいようだ。しかも、病院が潰れては地域のためにも良くないし、自分も職を失ってしまう。そんな葛藤が、聞こえてくるようです。

 しかし悩んだ結果、どちらかと言えば薬の処方を減らす方向に心が傾くように思います。

医療はガチガチの規制産業という事実

 医者の仕事というのは、ほぼすべて厚生労働省が規制しています。医療界全体も同じで、「規制産業」と呼ばれています。ですから、厚生労働省の指示に、ほぼ間違いなく従わざるをえない構造になっているのです。

 前述した通り、厚生労働省は医者に対して、多剤の処方を抑制する措置を取っています。「高齢社会が来て薬が増えすぎる。だから、薬をたくさん出す医者にはお金をあまりあげません。あとは、現場で考えて頑張ってね」という厚生労働省のメッセージです。これに対し、現場の医師が患者さんと経営の板挟みで苦慮するという構図が出来てしまっています。これは薬の話だけではなく、多くの医療現場で見られます。

 この厚生労働省の規制が薬の量を減らす効果につながるかどうかは分かりません。が、医療界でこのポリファーマシー問題は大きな話題になっています。私の予想では、おそらくあと20年もすれば、医者が処方する薬の数は大きく減っていくのではないかと思っています。