頭の病気なのに心臓マッサージをした理由

Q2 頭の病気である「くも膜下出血」なのになぜ心臓マッサージをした?

 その後の報道で、この舞鶴市長はくも膜下出血だったということが判明しました。くも膜下出血とはどんな病気でしょうか。

 一言で言えば脳卒中の一つです。人間の脳は柔らかいので、脳に近い順に軟膜・くも膜・硬膜という3つの膜で覆われ、その外に頭蓋骨があって保護されています。血管がくもの巣のように張り巡らされているから、くも膜という説があります。この血管に「こぶ」があり、それが破裂して出血するものがくも膜下出血という疾患です。こぶは、脳動脈瘤と呼ばれます。

 脳みその近くで出血するため、その頭痛は非常に特徴的です。私は救急外来で頭痛の患者さんが運ばれて来た時、必ずこう聞きます。

 「その頭痛は、バットで殴られたような痛みではありませんか? 人生最大の痛みではありませんか?」と。この病気は血管が破れるので、激しい頭痛が特徴だからです。

 痛みだけではなく、患者さんは吐いたり意識を失ったりすることもあります。ひどいと心臓が止まることもあるのです。おそらく、今回倒れた市長は意識がなかったのでしょう。さらに呼吸も止まっていた、あるいは正常ではなかったため、心臓マッサージを始めた。いや、動画を何度見返しても素晴らしい対応ですね。

心臓マッサージには交代要員が絶対に必要

Q3 なぜ他にも女性たちは駆け寄ったのか?

 この動画や報道によると、後から複数の女性が駆け寄っています。ここからは私の推測ですが、この女性たちは医師あるいは看護師だったのでしょう。そして、冒頭の女性が始めた処置を手伝おうとして土俵に駆け寄ったのではないでしょうか。

 冒頭の女性がした行為のことを蘇生行為と言いますが、これには人手が必要です。心臓マッサージは「絶え間なく」やり続けることが必要なもの。私は移動中のストレッチャーに乗り、患者さんに馬乗りになるようにして心臓マッサージを続けながら搬送したこともあります。しかし前述したように、心臓マッサージはやる人がすぐに疲れてしまうのです。5分もやればクタクタになってしまうでしょう。さらに心臓マッサージは、十分に胸を押し込んでから力をゆるめ、ちゃんと元の場所まで戻すという、その動きのクオリティが重要な手技でもあります。疲れるとクオリティは必ず下がりますから、交代要員がどうしても必要なのです。

 とにかく、一人でも蘇生行為を知る人がいた方がいいのは間違いない。そういう判断で、駆け寄って土俵にものぼったのでしょう。