八角理事長が謝罪コメントまで掲載

 これについては、相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)からこんな謝罪コメントが出ています。

 「本日、京都府舞鶴市で行われた巡業中、多々見良三・舞鶴市長が倒れられました。市長のご無事を心よりお祈り申し上げます。とっさの応急措置をしてくださった女性の方々に深く感謝申し上げます。

 応急措置のさなか、場内アナウンスを担当していた行司が『女性は土俵から下りてください』と複数回アナウンスを行いました。行司が動転して呼びかけたものでしたが、人命にかかわる状況には不適切な対応でした。深くお詫び申し上げます」(日本相撲協会ホームページより)

 もう謝罪されているので蒸し返すのも意味がないかと思いましたが、この「応急措置」についていまだに多くの質問をいただいています。ですから今回は、実際に私がいただいた質問に答えようと思います。医者が本件をどう見ていたか、ご参考になれば幸いです。

完璧な対応をした、あの女性

Q1 駆けつけた女性は何をしたのか?

 私が見た動画から判断すると、倒れた市長の周りに人だかりができていました。そしてその後、一人の女性が駆けつけ土俵にのぼると、様子をうかがっているだけの周りの人を押しのけて市長と直接コンタクトをします。そして、すぐに「心臓マッサージ」を始めたのです。

 心臓マッサージとは、横になっている人の胸のあたりを両手でかなり強く押し込む動きを、1分間に100回のペースでやる行為のこと。マッサージという言葉の雰囲気とはおよそかけ離れた、かなり激しい行為です。私も時々救急外来で心停止の患者さんに行いますが、これを1分間もやると汗がポタポタと患者さんの胸にかかります。胸を押しているとボキ、ボキと肋骨が折れることがありますが、構わず続けます。正式には胸骨圧迫(きょうこつあっぱく)といいます。こんな動き方ですね。

 この行為を、倒れてからどれだけ早く行うかが、倒れた人の生存や社会復帰に大きく関わります。この「どれだけ早く」は、秒の単位です。文字どおり1秒でも早く開始する必要があります。ですから、医者や看護師だけが行うわけではなく、実は倒れた人と一緒にいた人(バイスタンダーと言います)が行うことが強く推奨されています。

 日本ACLS協会ホームページでは、一般市民向けにこんな手順が公開されています。簡単に言えば、

「意識のない人を見つけた」
 →(周囲の安全を確認して)「誰かに119通報と自動体外式除細動器(AED)を持ってくるよう要請する」
 →「呼吸しているか確認する」
呼吸をしていないか、変だと思ったら
 →「胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始め、絶え間なく続ける」
 →AEDが来たら、装着する
となります。

 ここでのポイントは、医療関係者でなくても、心臓マッサージを始めてほしいという点なのですね。これは読者の皆様、今これをお読みのあなたにも知っておいていただきたい点です。ただ、今回のケースでは医師もしくは看護師だったようですね。動画を見ていても、駆け寄ってすぐに「119通報とAED」の指示を出しているようですし、その後呼吸確認をパッとして即心臓マッサージを始めています。これはどう見ても完璧な流れでした。