乳がんから胃腸、外傷、心臓まで幅広く学ぶ

 そして、後者の350例のなかには、同じような手術に参加すれば良いというわけではなく、まんべんなく色んな手術に参加する必要があり、このような縛りがあります。すなわち、

  • 消化管および腹部内臓(50例)
  • 乳腺(10例)
  • 呼吸器(10例)
  • 心臓・大血管(10例)
  • 末梢血管(10例)
  • 頭頸部・体表・内分泌外科(甲状腺など)(10 例)
  • 小児外科(10例)
  • 外傷の修練(10点)

です。これらを全て学んで初めて受験資格が得られるのですが、このハードルが高いのです。私も若手のころは、心臓の手術を学びに他の病院に3カ月泊まり込みで行ったり、外傷(おおけがのことです)の手術を経験するために救命センターに3カ月学びに言った記憶があります。

 なお、この試験に受かった翌年に受ける面接試験では、ほとんど落ちないと聞いています。

外科専門医であっても一人で執刀できる手術があまりないことも

 しかし、ここで大切なことを申し上げておきます。それは、「外科専門医を持っていても、一人で責任を持って執刀できる手術はあまりない」という点です。専門医という名前はかっこいいのですが、私のイメージではあくまでスタートラインに立った外科医、という印象です。医師6年目に外科専門医になったとき、「独力でできる手術」の少なさに唖然としたのをよく覚えています。

 ちょっとややこしいのですが誤解ないようにお願いしたいのが、外科専門医だけを持っていても、そしてそれを持っていなくても、ハイレベルな外科医は存在するという点です。ややこしいのですが、この資格をなぜか取得せず、しかし第一人者としてバリバリ手術をしている医師も稀にいます。ですから、専門医とは、「その資格を持っていれば、ある一定以上の知識と技術があることが保証されている」くらいの資格として認識していただければ良いでしょう。