24時間、ぶっ通し勤務から始まった初日

 勤務は2月1日からの予定でしたが、人手不足、というより常勤の医師がそもそもいなかったため前日夜からとなりました。このあたり、なんとも医者っぽい勤務体制なのですが……。

 1月31日の夜9時に病院に着き、そのまま泊まりの勤務です。夜中に仕事が発生したこともあり、3時間ほどしか眠れませんでした。そして翌朝8時半、約80人の職員さん全員の前で挨拶をしました。

 職員さんだけなら良かったのですが、その場に行くと、東京のキー局や地元のテレビ局から大きなカメラが6台ほど、さらに新聞社10社から記者さんたちが来ていました。「何なんだ、これは……」と驚きながらも、あらかじめiPhoneにメモしておいた内容を話しました。

 その後、いわゆる「囲み」の取材(政治家なんかがよく受けている、ボイスレコーダーを持った記者さんたちに囲まれて立ち話をするアレです)を受け、「もうご勘弁を」とばかりに逃げるように病棟へ。こんなバタバタで、院長初日は始まりました。

囲み取材を受ける高野己保理事長

 睡眠不足でしたから当然眠いはずなのですが、日中は頭がカッカと興奮して全く眠気を感じません。医学的に言えば「交感神経が賦活化(ふかつか)」した状態だったのです。猫なら「フーッ!」と毛を逆立てた状態ですね。ちなみに人間も、ケンカなんかで激しく興奮すると「立毛筋(りつもうきん)」という毛穴の筋肉が収縮して毛が立つことがあります。

入院患者一人ひとりを「把握」

 それはさておき、院長初日にはまず入院患者さんの「把握」をしなければならないと思い、内科60人分のカルテを開きました。

カルテのファイル。一人の患者さんに一つのファイル

 医者がする「把握」とは、次のようなものです。

・患者さんの氏名=当たり前のようですが、同姓同名の患者さんがいたら取り違えの危険があるので重要。実際、同じ苗字の方が数組、いました
・年齢=80~100歳でした
・性別=見た目だけではわからないことがあります!
・現病歴=なぜ、いつから入院しているか
・既往歴=過去にどんな病気をしたか
・Problem list=現時点の問題。「隣のベッドの人とけんかをしている」なども含まれます
・内服薬
・栄養=口から食べているか、経管(けいかん、鼻から胃まで入れたチューブからの栄養剤)か、胃瘻(いろう、腹壁から胃に穴を開けて入れたチューブからの栄養剤)か、点滴か
・排泄=自力でトイレに行っているか、オムツか、尿管に管が入っているか。どのくらいの頻度でお通じが出ているか
・今日のバイタルサイン=体温、血圧など

 これが最低限の「把握」になります。これに、どんな性格か、意思疎通はどの程度可能か、職業(前職)は何か、ご家族はどこに住んでいるのか、ご家族の誰(息子さんか娘さん、あるいはお嫁さんか)がお見舞いにどれくらいの頻度で来ているか、などが加わります。さらに高野病院の場合、被災地ならではのパラメーター、例えば「避難していたか否か」「避難していたら、その期間と場所」なども入るのです。