こんにちは、福島県郡山市にあります総合南東北病院外科の中山祐次郎です。ニュースを見ていると、全国では少しずつ気温が上がってきたようですね。春一番ももうすぐ吹くみたいですが、私の住む福島県郡山市はまだまだ雪がちらついています。いまでも時々、雪に埋もれかけた愛車を専用デバイス(器具)で掻き出す日々。このデバイスがないと、とてもじゃないですが住めません。いい加減、雪が嫌いになってきました。

ダイユーエイトというホームセンターで買いました。これがないと手が凍えてしまいます
ダイユーエイトというホームセンターで買いました。これがないと手が凍えてしまいます

 こちらの病院では、患者さんの退院日を病院側が決めても「いや、雪だからその日はお迎えこれねえんだ。別の日にしてくれ」なんて言われることがよくあります。これも北国ならではでしょうか。

 さて、今回は医療分野の出版にまつわるお話です。

 年末のある日のこと。とある知り合いの編集者さんから1通のメールが来ました。ちなみに私は外科医をやりつつネット上で、ここ日経ビジネスオンライン以外にもいくつか連載(日経メディカル、Yahoo!ニュースなど)を持たせていただいていますので、出版社や編集者の知り合いがけっこういるのです。なんだろうと思いメールを開くと、ある出版社の編集者さんが私に本の執筆依頼をしたがっているという内容でした。

 正直なところ、私は戸惑いました。いまこんなに連載をしているのに、新しく本を書く余裕があるだろうか……。そう思いつつも、一度お会いして、お話を伺うことに。メールで興味がある旨を書いてお返事したところ、送られてきた「企画書」にはこんなことが書いてありました。

仮タイトル「現役外科医が教える医者のホンネ」

 そして内容はこんなエッジの効いた項目が並びます。

  • 医者にとって、「めんどくさい」患者とはなにか?
  • 開業医は信頼できるか?
  • 患者と恋に落ちることはあるのか?

 おお……なかなか激しいコンテンツ。

 ここで、日経ビジネスオンライン読者の皆様に、まずは筆者の立場から見た出版業界のお話を、つまり本が出版されるまでの流れを簡単に解説します。とはいえ私も2014年に1冊出しただけですが。

会議、そしてダッコウ!?

 最初に出版社所属の編集者が「あの筆者にこんな話を書いて欲しいなあ」と考えて企画書を書き、その筆者に持っていきます(たまに筆者が作った企画書を出版社に持ち込むこともありますが)。そして筆者が「書くよ」=「執筆OK」が出たら、その編集者は出版社の会議に企画書を出します(まるで我々外科医がする手術前カンファレンスみたいです)。会議は通常1回ですが、出版社によってはいくつもあり、編集会議、営業会議と分かれていて、最後に社長のGOサインが必要な出版社もあります。

 で、会議を全て通ったら、いよいよスタートラインです。編集者は改めて本の内容を練り、筆者とディスカッションをしてどんなものにするかを決めます。だいたい目次くらいが決まったところで、筆者の執筆がスタートします。2~3カ月、あるいはもう少し長い期間を経て原稿が書き終わります。このことを「脱稿(だっこう)」と言いまして、初めて聞いたときは「脱肛かよ!」と驚きました。ちなみに脱肛とは肛門があるべき場所から外に出てしまう高齢者に多い病気のことでして、当然別物です。私大腸が専門なので、肛門の病気も診るのです。

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