高野病院に悲壮感はない

 これだけカッコつけた後で恐縮ですが、実は私は今、なかなか楽しい生活を送っています。「楽しい」と言うとすぐ「不謹慎だ」と言われそうですが、私はあえて楽しいと言いたい。私は悲惨の地に、全てを投げ打って参上したヒーローではありません。テレビや新聞はそういう描き方をする傾向にありますが、そうではないのです。

病院から出るとすぐ太平洋が見える

 ナースステーションからは、看護師さんたちの笑い声がよく聞こえます。看護師の打ち合わせには、たまに患者さんが2人くらい交じって、ニコニコしています。看護師さんの人手は十分ではありませんが、病院はいつも優しさにあふれているのです。

 ある時、ヒップホッパーみたいなピアスだらけの若いイケメン看護師さんが私に、こう声を掛けてくれました。「先生、キレちゃってもいいんすよ。(取材のために殺到する)テレビにも、看護師にも」。優しい言葉に感謝すると共に、「私はそんなに怖い顔をしていたのか」と反省もしました。

大組織では考えられない風通しの良さ

 亡くなられた高野院長の娘さんで、この病院の理事長を務めている己保(みお)さんは、常に「ボケ」を連発して病院を明るくしています。私と目が合うと、大体、踊ります(笑)。

 先週は関西弁の看護師さんが、ある患者さんのために私が立てたプランに対して、こう熱く指摘してくれました。「先生、実はこれまで言ってなかったけど、私、看護師の資格のほかに○○の資格も持っているんです。その経験から考えて、あの患者さんにこのやり方はどうかと思う」。

 自分はほかの資格も持っているなんて言ってしまったら、これまで以上に仕事を任せられることは目に見えています。それでも私のたどたどしいプランを見るに見かねたのか、名乗り出てくれました。彼女の人情を感じた瞬間です。

福島の自宅近くをランニング中に見つけた梅に、温かさを感じた

 看護師さんだけではありません。ほかのスタッフさんたちも、何が一番、患者さんのためになるかをいつも真剣に考えています。私が「あの患者さんを何としても家に返してあげたい」と言うと、看護師さん、栄養士さん、作業療法士さんが集まって、どうしたらいいかを一緒に考えてくれました。

 こんなことは大きな病院では考えられません。規模が大きすぎない組織だからこそ風通しが良いのかもしれません。私は今、チーム医療というものを肌で学んでいるのです。

 次回も院長として実際に働いてみて感じたことをつづります。それではまた、次回をお楽しみに。